【第33回】
治療必要なら成長ホルモン注射
低身長(1)
母親が、T君(18)の身長の伸びが「ほかの子と比べて極端に遅い」と確信したのは、小学3年の春の運動会で団体競技をするわが子を見たときだ。T君はその年の夏休みに入院して低身長に関する検査を受けた。その結果、下垂体の機能が低下していて、十分な成長ホルモンが分泌されていないことが判明した。医師の勧めで成長ホルモンを注射する治療を始め、毎日自分で注射する生活を7年間続けた。効果は著しく治療を始めた初年度は10センチ、その後も順調に伸び、今では163センチになった。
「身長が低いことを心配して受診される方は多いですが、検査の結果、ホルモンの不足による低身長であるケースは10人に1人もないくらいです。成長ホルモンの注射はあくまで病気の治療であり、容姿のために行うものではありません」。低身長の治療の専門家である静岡県立こども病院内分泌代謝科の加治正行医師は強調する。「将来の身長は出生時点で、遺伝的にほとんど決まっていますが、ホルモン分泌などに異常があると、伸びが悪くなります。身長の伸びが鈍った場合でも、早く病気を発見し、思春期前に治療すれば、遺伝的に予定されていた身長まで到達することも可能です」。
低身長の検査では、血液や尿検査で栄養状態や内臓機能なども調べるが、決め手となるのは、血液中の成長ホルモンと甲状腺ホルモンの量だ。どちらのホルモンが足りなくても成長に支障が出る。手のレントゲン写真を撮って骨の発育状態を見ることも重要なポイントだ。「これは、骨の状態が何歳相当かを調べるものです。骨年齢が若いほど、治療により背が伸びる可能性が大きいということです」。両親の身長、出生時の状態、骨の成熟度、そして成長ホルモンの分泌状態といったことを総合的に判断して治療の必要性を決定する。
ごくまれに、染色体異常や、脳しゅようといった病気が隠れていることもあるが、背の高さは、その人の個性とか体質と考えてよいものがほとんど。あまり心配する必要はないが、気になったら早めに専門医に相談し、成長の様子を医師とともに観察するのも、治療のタイミングを逃さないための方法かもしれない。
【ジャーナリスト 月崎時央】
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