12年ロンドン五輪団体銅メダリストで予選10位通過の川中香緒里(25=ミキハウス)が、同23位通過のナオミ・フォルカード(英国)に0-6で敗れた。

 まさかの完敗に「まだ終わっていない感じがします。不完全燃焼?

 そうですね」と事態を飲み込めていない様子だった。

 メダル候補がどこかおかしかった。第1エンドの2射目。普段は9~10点を刻む川中に焦りが生まれた。理想の形ではない状態で、矢を発射。3点という思いがけない数字で、相手に心の余裕を与えてしまった。「技術的なもの。きちんと打てていないのが原因」。近大時代から川中を指導する金コーチも「ここまで打てないのは始めて。緊張して弓が引けていない。ビックリしました」と目を丸めた。第1エンドを落とすと、最後まで自分のペースをつかめないまま五輪が終わってしまった。

 さまざまな苦境を乗り越え、たどりついた舞台だった。今年5月のW杯では予選ラウンドを経て迎えた個人戦で、首脳陣が川中の試合を勘違い。国際連盟からの情報は首脳陣のタブレットへ入る仕組みだったが、指示通りに動き、道具を片付けていた川中が不戦敗という事態に陥った。6月上旬には全日本アーチェリー連盟関係者、選手、所属指導者などが集い臨時会議を実施。普段はポーカーフェースで知られる川中が、その場で号泣しながら思いを伝える異例の事態となった。

 連盟は協議の上、男女代表4人中3人を指導する金コーチのリオ五輪同行を決定。だが6月に決まった緊急人事だけで、全てはうまくいかなかった。女子団体は準々決勝で韓国に敗れ、女子の林と永峰は個人初戦敗退。残るは団体出場を逃した男子の古川が個人戦を残すだけだ。川中の敗退は本人だけでなく、アーチェリー界にとっても痛いものとなった。

 川中は今後に向け「まずはリオが目標だった。今年度の試合をしてから、考えたい」と話すにとどめた。4年前から立場が変化し、エースとして臨んだ自身2度目の五輪はほろ苦いものとなった。