卓球女子日本代表の石川佳純(23=全農)が、中国勢撃破のために磨いてきた攻撃的な一打がある。自身のサーブをレシーブした相手ボールを、そのまま得点につなげる「3球目攻撃」。同じフォームから左右強弱を自在に操るには、インパクトの手首の角度がポイントだった。リオデジャネイロ五輪では、日本卓球界初の金メダル獲得に挑む。

 左腕から放たれるフォアハンド。石川は「3球目」で相手を仕留めるイメージを描きながら、右の手のひらにそっと乗せたボールをトスする。サーブ(1球目)を放ち、相手のレシーブ(2球目)に反応して、腕を弓のようにしならせる。そして3球目に一撃必殺で得点を奪う。

 世界最強の中国勢も警戒する「3球目攻撃」の最大ポイントを、石川が明かした。「相手から見て強弱やコースが判断しにくいように、同じフォームで面を替えたり、膝を使ってフェイントを入れたり」。インパクトの瞬間の重要性を力説した。「回転数を出すことよりも、コースが大事。相手が待っている読みを外すこと」と、手首の角度を微妙に調整する。

 そのためには「1球目」がお膳立てとなる。相手レシーブのコースや強さまで想定してサーブを放つ。「打ちやすいようなレシーブが返ってくるように、サーブを出すことも大事」。打つ際の手首や腕への負担は大きい。筋力や関節の強化を筋力トレーニングには求めない。「私は筋トレの1つとしてサーブ練習をします。相手に分かりにくいサーブは負担もかかる。自然にケガをしない強さが生まれる」。手首強化とサーブ強化の一石二鳥だ。

 12年ロンドン五輪ではラリーの正確さで勝負してきた。団体銀メダルを獲得したが、シングルスは4位。準決勝で李暁霞(中国)に敗れ、3位決定戦はフェン(シンガポール)に負けた。ラリー戦が続くほどパワーのある相手に途中で力負けしてしまう。さらに上を狙うには技術を生かして、少しでも早く勝負を決める必要性を実感した。「ロンドンよりも、より速い攻撃ができるようになった」。中学時代から同学年のライバルとして切磋琢磨(せっさたくま)し、ダブルスでペアも組んでいた森薗美咲(日立化成)も証言。「佳純の3球目は『えっ、こっち~』ってところに出てくる。特に最近はすごい。その技術は中国人にもないもの」と世界一を強調した。

 リオでは福原、伊藤と団体に臨む。第4シードのシングルスでもメダル獲得は当然。だが、中国の丁寧、李暁霞、団体出場の劉詩■には1度も勝利したことはない。リオ本番で分厚い壁を打ち破るため「3球目攻撃」を武器とする。【鎌田直秀】※■は雨カンムリに文の旧字体

 ◆石川佳純(いしかわ・かすみ)1993年(平5)2月23日生まれ、山口市出身。両親ともに卓球選手で、平川小1年で競技を始める。07年全日本選手権で13歳11カ月の史上最年少ベスト4。10年モロッコオープンで、プロツアー初優勝。11年には高校生として22大会ぶりに全日本初優勝。12年ロンドン五輪シングルス4位、団体銀メダル。12年、16年世界選手権団体銀。趣味はカラオケ。158センチ、51キロ。家族は両親と妹。血液型O。<卓球の主な戦型>

 ◆ドライブ型

 強力な前進回転(ドライブ)を主な武器として戦い、世界各国で最も一般的。欧州や中国勢はパワーも生かされる。石川の基本型。

 ◆前陣速攻型

 卓球台からほとんど離れない戦型。速いボールへの対応が必要なため、俊敏性や動体視力が求められる。福原や伊藤は、特殊なラバーも用いて、変化をつける。

 ◆カット型

 卓球台から少し離れて、ボールに強烈な回転をかけてラリーを継続して好機を狙う戦型。国内外通じて希少で、対戦相手として苦手にしている選手も多い。