卓球女子団体の日本が、シンガポールとの3位決定戦で3-1と勝利し、2大会連続メダルとなる銅メダルを獲得した。チームのまとめ役だった最年長の福原愛(27=ANA)は歓喜と安堵(あんど)の涙が止まらなかった。第1試合のシングルスで敗れたものの、第3試合のダブルスを伊藤美誠(みま、15=スターツ)とのペアで勝利。3人娘の“長女”として精神的な支えとなり、4大会連続出場の五輪で完全燃焼した。

 福原が大観衆の前で、人目をはばからず泣いた。止まらなかった。2-1からの4番手で最年少15歳の伊藤が、相手エースを撃破し、ガッツポーズした姿に、顔を紅潮させ「やった~」。拳を握った手で、すぐさま顔を覆った。隣にいた石川が両手でぎゅっと抱きしめ、伊藤も駆け寄った。27歳になった「泣き虫愛ちゃん」を中心に“3姉妹”が1つになった。

 「最年長で主将ということで負けても勝っても私が動じたら駄目と思っていたんですけど、最後は…。本当に銅メダルを取れて良かった。夢でなければいいなと思っています」

 シングルスでは、直前の不調がうそのような快進撃で自身初の4強進出。準決勝、3位決定戦と連敗し、悔しかった。同時に、3回戦で敗れ、どん底の精神状態だった石川をどう立ち直らせるかを模索。選んだのは「みんなで、団体戦で金メダルを持って帰ろうよ。(伊藤)美誠にもメダル持って帰らせようよ」の言葉だった。だからこそ準決勝ドイツ戦の負けを受け入れられなかった。自分が負けて敗戦が決定。「すべて私の責任」と抱え込んだ。でも翌日、今度は“次女”の石川に救われた。「銅メダルだって貴重だよ。エイ、エイ、オー」。銅メダルだけはつかみとった。

 福原の自宅本棚には0歳から母千代さんが読んでくれた1冊の本がある。イソップ童話「北風と太陽」。北風と太陽が旅人の上着を脱がせる戦い。「私の人生の参考書なんです。母も私が持っていることを知らないかも。自分本位で事をなしてもうまくいかない。相手の気持ち、立場になって考えないとダメですよね。大人になってからも恥ずかしいけれどたまに読んでいます。学ばせていただいています」。自分のことを差し置いても「大丈夫~」と石川、伊藤に常に気を配る。まさに太陽だった。

 表彰式後、真っ先に向かったのは母のもと。ロンドン大会に続いて首にメダルをかけてあげた。ようやく笑顔に変わった。卓球だけに走り続けてきた27歳。今後の選択肢はいろいろある。「今は終わったばかりなので、まずはこの銅メダルのうれしさに浸りたいです」。リオでの太陽は、最後に一番輝いていた。【鎌田直秀】

 ◆北風と太陽

 北風と太陽が旅人のコートを脱がす競争をする。北風は強風でコートを吹き飛ばそうとするが、旅人は寒さでコートを押さえ脱がせられず。逆に太陽が日差しを投げかけると「暑くなった」と脱いだ。「力ずくでは物事は解決しない」という教訓。