激戦のオールスターを新田祐大(29=福島)が制覇して、3月日本選手権(ダービー)に続き今年2つ目のタイトルを手にした。ライン細切れの中、赤板で絶好の3番手を確保し、最終2角まくりで圧勝した。12月のKEIRINグランプリ(GP)では初制覇へ2冠王が駆ける。

 G1最高格のダービーを制した男が、それに次ぐ格式のタイトルを圧巻の強さでつかんだ。同一年にダービー、オールスターを制するのは09年の武田豊樹以来、史上4人目の偉業だ。ゴール直後にはカント(傾斜)のきつい33バンクの1センターで両腕を秋空に突き上げた。

 3月22日。京王閣ダービーはゴール前の大激戦を写真判定で制した。「ぎりぎりの勝利で実感も湧かなかった」。あれから185日。2度目の戴冠は圧勝劇だった。赤板先行の竹内雄作の3番手に追い上げて好位をゲット。最終2角からスーパーダッシュすると別線の反撃を許さなかった。

 G1・2冠は昨年のオールスター決勝4着から、1年を要したリベンジの集大成だった。「去年のオールスターが終わった時から、ダービーとオールスターが目標だった」。ナショナルチームの海外遠征や合宿と、競輪参戦という強行日程のはざまを乗り越え、大願成就した。

 今シリーズも直前のナショナルチーム合宿(7~11日)で肉体的にシビアな状態だった。「かなり体がきつい。それでも結果を残したかった」。高校時代から自転車競技で世界を目指し、二刀流の道を選んだからには言い訳はできない。来夏のリオ、そして20年の東京五輪へ道は続く。

 11年3月11日に、地元福島を襲った東日本大震災の惨劇から4年。戦い、結果を残すことで復興への光をともす。「福島の新田祐大から世界の新田祐大に」。五輪へ、GPへ全力で駆け抜ける。【大上悟】