サッカーのミカタは人それぞれだと思います。ただ、もう1つのメジャースポーツ、野球と違ってデータをテーマに語ることはなかなか難しいのではないでしょうか。

 順位以外に数字で争うものを比較してみるとサッカーは得点ランキング以外にあまり多くありません。一方で野球は流行語にもなった「トリプルスリー」だけでも打率、本塁打、盗塁と3つもありますから、その差は歴然としています。

 ただ、今季からJリーグが新たなミカタを提示してくれました。J1で選手の動きを追尾し「トラッキングデータ」とし、走行距離とスプリント回数などの詳細データを試合ごとに公表。18日にその集計が発表されました。

 なかなか興味深いデータなので、ここで引用させていただこうと思います。

 総走行距離=チーム 最長は湘南の3939・826キロ(年間順位は8位)

 総走行距離=選手 年間1位は松本DF田中隼磨選手の389・975キロ。ざっと1年で東京-大阪間を走破したことになります。2位はMVPに輝いた広島MF青山敏弘選手でした。見逃せないのは10位にG大阪のベテラン、MF遠藤保仁選手が入っていること。トップ10の最年長35歳です。意外と言っては失礼ですが、しっかり走っています。

 総スプリント回数=チーム 最多は湘南の5920回。湘南は堂々の2冠達成です。

 総スプリント数=選手 名古屋FW永井謙佑選手の894回。800回超は永井を含め4人。この4人の中には、走行距離1位の田中隼磨選手も入っています。

 トラッキングデータの「スプリント」の定義は時速24キロ以上です。ざっと計算すると、50メートル走を7・6秒程度で走り切るスピードになるのでなかなかのものです。

 回数もそうですが、永井選手の、ちょっとアクセルを踏むとギュンとスピードが出る超高級スポーツカーのような加速力が証明されたのだと思います。

 なお、この集計データによるとフル出場したフィールドプレーヤー(=GK以外)の1試合平均の走行距離は10・563キロ。スプリント回数は13回だそうです。

 Jリーガーは毎試合10キロ以上走って、皆さんの全力ダッシュに近いスプリントを13回し、その上で細かな技術、戦術的な違いを生み出して11人で勝ち点3を争っているのです。

 来年、2016年もさまざまなサッカーのミカタを提示していければと思います。1年間お世話になりました。それでは皆さま、よいお年をお迎えください。


 ◆八反誠(はったん・まこと)1975年(昭50)岐阜県生まれ。98年入社。名古屋でアマチュア野球や一般スポーツを担当し、06年からサッカー担当に。途中、プロ野球中日担当も兼務。14年1月から東京勤務。日本協会と横浜を担当。