J2札幌が、4月の電力小売り全面自由化に合わせ、北海道の大手ドラッグストア「サッポロドラッグストアー(サツドラ)」、新電力大手F-Powerと提携し、電力販売事業に乗り出す。販売事業を行う新会社の名前は「エゾデン」。社長は、札幌の野々村芳和社長(43)が兼任することになる。

 元Jリーガーの同社長。清水東高、慶大を経て市原(現千葉)、札幌と01年まで現役でプレーした。その後はテレビ解説や自身のサッカー教室運営など、さまざまな角度から普及に努めてきた。13年に札幌に就任すると、昨季は札幌関係者として初めて、Jリーグ理事にも就任した。

 選手やメディア、経営者としての経験とノウハウ、人脈を生かす手腕は、なかなかのもの。今回の電力販売だけでなく、これまでも、実利にアイデアを絡め、サッカーに興味がない人にも関心を持ってもらえるような、新たな手法を考え、実現させてきた。

 13年オフには元日本代表MF小野、14年オフには稲本の獲得交渉に尽力。有名選手の加入で、観客動員、グッズ収益増につながった。昨年はトライアスロンのリオデジャネイロ五輪候補、細田雄一とパートナーアスリート契約を結んだ。細田選手がレースに挑むスーツに「コンサドーレ」のロゴが入る。違う競技関係者にも認知を広めるというものだった。

 大好きな競馬での人脈を生かし、15年から社台グループの体験型公園「ノーザンホースパーク」とパートナー契約を結んだ。その際、同パークの人気ポニーでサッカーができる「チッチ」を選手として加入させ、競馬ファン以外にも話題が広がる方法を考えた。

 いろんな声はある。強化から営業まで最前線に立って動き、自身のメディア露出にも好意的で、話し上手。そんな奮闘ぶりを、メーンスポンサー石屋製菓の北海道内のテレビCMで「社長が目立ちすぎ」と、稲本がぼやくシーンがある。これには賛否はあると思うが、クラブに何が必要で、そのための指示を出し、自分でも動いて着地点を導き出そうという姿勢は、経営トップとして、素晴らしいことだと思う。

 直接、話していても、クラブをチーム的にも経営的にもビッグにしたいという純粋な思いを強く感じる。ただ、選手出身だからか、成績に対しては、かなり短気だ。14、15年と2年連続で監督が途中交代。今季は開幕3連敗の福岡が、井原監督に最後までかじを託し、念願のJ1昇格を果たした。札幌は14年途中に財前監督からバルバリッチ監督、昨季途中に同監督から四方田監督に交代も、昇格プレーオフすら、逃している。どちらがいいかは結果論だが、準備不足でのリスタートは、リスキーなことの方が多い。

 今季は四方田監督が続投する。コーチは異例の6人体制。サポート役を増やし、役割分担を徹底させたいという、社長の気遣いに基づくものだ。万全に仕立てた就任4年目の16年体制。小野、稲本ら主力選手もほぼ残留する。あとは“ボス”がどっしり構え、シーズン最後まで現体制を見届ければ、おのずとプレーオフなりJ1なり、それなりの結果がついてくるような気はしている。


 ◆永野高輔(ながの・たかすけ)1973年(昭48)7月24日、茨城県水戸市生まれ。両親が指導者だった影響で小5からフェンシングを始め競技歴15年。早大フェンシング部で一度、現役引退し、00年に再起してサラリーマン3年目の27歳で富山国体出場。09年から札幌担当。