磐田に、もう来季の開幕を待ちわびている選手がいます。U-19(19歳以下)日本代表として、U-19アジア選手権の初優勝に貢献したFW小川航基(19)です。

 超高校級のストライカーとして注目を集めて入団した今季、小川航は「ゼロだった」と振り返っています。Jリーグでは出場機会を得られず、ベンチ入り5回のみ。ナビスコ杯では2試合に途中出場し、天皇杯にも1試合途中出場。しかし、公式戦3試合合計で92分に出場しながらシュートは0本でした。代表チームでは活躍しながらも、帰国間もない今月3日の最終節アウェー仙台戦(1-0)でもベンチ外。現場でJ1残留は見届けながら、シーズン全日程を終えました(天皇杯は既に敗退)。

 FWとして、点を取るためにはシュートを打たなければ始まりません。大きな期待をかけている名波浩監督(43)は「言語道断」と厳しい言葉を口にしました。本人も「0本が現状。シュートを打てていないということは、(チームメートからの)信頼が薄いということ。何もできなかったシーズンだった。磐田の勝利にもっと貢献できると思っていた」と反省ばかりが口をつきます。

 番記者の目からも、今季最も練習をしていたのが小川航でした。全体練習も必ず残ってFWジェイ(34)や名波監督とのシュート練習を繰り返し、ランニングも欠かしませんでした。あまりにも長い間グラウンドにいるため、時には名波監督から「もう、あがった方がいい」とストップがかかったこともあります。

 その「試合に出たい。ゴールを決めたい」という強い思いが、U-19日本代表での活躍につながったと思います。U-19アジア選手権で見せたヘディングゴールは、名波監督直伝の技術が生かされていました。代表ではエースとしての責任を果たし、5大会ぶりのU-20W杯(韓国)出場権獲得や、初優勝に貢献しました。自信を手に帰国しましたが、それでも「世間的に見たら、まだ何も成し遂げていない。自分では『ジュビロで』という思いが強くなった」と決意をあらたにしていました。

 名波監督は、小川航に「1試合シュート5本以上」の目安を伝えています。すでに来季を見据える小川航は「毎週、試合に向けてアピールする日々はとても刺激的だった。早く(Jリーグ開幕の)2月になってほしい。楽しみ」と話しています。来季はJリーグデビュー、プロ初ゴールと、ステップアップをする姿を見られるはず。そんな期待を込めながら、オフの間も練習を見続けます。


 ◆保坂恭子(ほさか・のりこ)1987年(昭62)6月23日、山梨県生まれ。埼玉県育ち。10年入社。サッカーや五輪スポーツ取材を経て、昨年5月、静岡支局に異動。J1磐田とJ3藤枝を担当。最近、肌の乾燥が気になります。