<高校サッカー静岡大会:常葉学園橘0-0(4PK3)藤枝明誠>◇25日◇決勝◇エコパ

 常葉学園橘(常葉橘)が藤枝明誠をPK戦の末に下し、7年ぶり2回目の優勝を果たした。決勝戦は前後半80分に延長20分の合計100分を戦いお互い無得点。PK戦はともに1本目を外し、常葉橘GK北郷健太郎(3年)が1本止め常葉橘が勝った。2次リーグ(L)から3次トーナメント(T)まで全7試合無失点での優勝。試合数は異なるが、2次Lから無失点優勝は19年前の清水商以来となった。常葉橘は12月30日開幕の全国大会に出場し、31日の1回戦で長崎代表の長崎総合科学大付と対戦する。

 準決勝に続き、小さな守護神がヒーローとなった。常葉橘GK北郷は相手の2人目のシュートを足に当て止めた。「緊張してました。体が震えてました」。浜松開誠館との準決勝でも相手の5人目を止め決勝に進出した。「準決勝よりも決勝の方が緊張しました。口の中はしびれてました」。ゴールを守った男には、大会ベストイレブンと最優秀選手の称号が与えられた。

 新井裕二監督(29)は「選手がよくがんばりました」と話した。センターバックに入る主将のMF石川大輔(3年)とDF登崎雅貴(3年)がゴール前へのボールをとにかくはじき返す。試合当初はショートパスが3つとつながらない。石川も登崎もパスミスからシュートを打たれる場面もあり、前半9分にはCKからポスト直撃のシュートを許すが、ピンチらしいピンチはこれくらいだった。北郷も「攻められても崩されてはいなかった」と話すほど。11本のシュートを打たれたが枠へ向かったシュートはこの1本だけだった。

 後半に入るとスピードのあるFW前田直輝(3年)を投入し相手の最終ラインにプレッシャーをかけた。33分にはゴール前で前田がフリーでヘディングするもライン手前でクリアされた。延長後半1分にも前田がゴール前でチャンスを作り、最後はDF池田誠(3年)がシュート。池田のシュートは大きく外れたが、効果的なカウンターが繰り出せるようになった。

 今の常葉橘を作ったのは、何の因果か藤枝明誠だった。9月2日のプリンスリーグで、1-3で敗戦。夏休みをかけて練習してきたことがまったく通用しなかった。手詰まり感があふれ、チームは揺れた。指揮官は「勝ちたければ守るしかない」と掲げていた理想を捨て去った。その後、守るサッカーで勝ち点を拾い、選手権に向けて自信を深め、優勝候補を打ち破った勢いと運を味方につけ、頂点に立った。7試合無失点は夏からの成長の証しだ。

 決勝が0-0のPK決着は、3次Tに8校以上が出場するようになった86年以降、90年の清水東対東海大一、01年の静岡学園対清水東に続く3度目。いずれも4-3で決着した。準決勝でPK戦を勝ち抜いたことも常葉橘の背中を押した。

 学校創立50周年の節目。夏はノーシードから野球部が甲子園へ出場した。石川は「とにかくうれしいです」と優勝の喜びを語った。今年1年間苦しんできたサッカー部へ、全国出場は何よりのご褒美となった。【加納慎也】

 ◆常葉学園橘

 1963年(昭38)に橘高等学校として創立された私立校。78年から現校名、97年から男女共学となる。生徒数909人(女子458人)。サッカー部は73年創部。部員は3年26人、2年33人、1年32人、マネジャー7人。主なOBは薗田淳(J2町田)庄司隼人(プロ野球

 広島)関谷正徳(元レーサー)。所在地は静岡市葵区瀬名2の1の1。吉村耕司校長。