<アジア杯:日本5-0サウジアラビア>◇17日◇1次リーグ◇B組◇カタール

 最前線のFW前田遼一(29=磐田)が、ようやく「答え」を出した。2点リードの前半19分。DF長友の左からのクロスを、右足アウトで芸術的なボレー弾。後半6分には右からのクロスを、飛び出した相手GKの鼻先でたたいて頭で決めた。主役は岡崎に譲ったが、一貫して1トップで先発起用するザッケローニ監督の期待に応えた。

 前田

 1、2戦と結構(チャンスを)外していたので決められて良かった。いいボールが上がってきたので、チームメートに感謝です。

 自身の2得点に加え、後半35分の岡崎の3点目を、タメをつくって針の穴を通すような左足のラストパスでアシスト。「(岡崎は)非常に動きだしが速いので、やりやすい」。昨季Jリーグ史上初の2年連続得点王に輝いたJ最強FWが、アジアの舞台でも輝いた。

 日本では数少ない万能の大型ストライカー。ずっと期待を背負い続けた。だが、ケガに泣き代表に定着できなかった。だからこそ、体の管理を徹底する。昨年2月。磐田の鹿児島キャンプでは、古傷の右ひざの負担を減らすため練習場の往復で、わずかな段差の階段さえ避けた。スロープを使って出入り。わざわざ遠回りをしてまで、万全の注意を払っていた。

 代表でも、ここまで「遠回り」してきたが、これで3試合連続の先発。結果も出した。それでもまだ、目標は先にある。「もっと質の高いプレーで、もっとチームに貢献できるように頑張りたい」。寡黙な仕事人の口調は、いつになく滑らかだった。