女子W杯カナダ大会(6月6日開幕)で連覇を狙うなでしこジャパンに、強力援軍が現れる。男子の元日本代表監督で現在は四国リーグFC今治(愛媛)のオーナーを務める岡田武史氏(58)が、激励のため香川・丸亀合宿を訪れる計画を立てていることが21日、判明した。男子の代表監督で唯一、2度のW杯を経験した岡田氏が、これから2度目を迎える佐々木則夫監督(56)に「岡田メソッド」を伝授する可能性もある。

 日本を代表する男女の指導者が、香川で「2度目のW杯」を語り合う。現在、首都圏と四国を往復している岡田氏は、24日に行われるFC今治の前期最終節(リャーマス高知FC戦)に合わせて今日22日にも今治市へ入る予定。そこから瀬戸内海沿いに東へ車を走らせれば約1時間30分で丸亀に着く。チームの練習や地元関係者との会合の合間を縫って顔を出す方向で調整しており、佐々木監督も「電話で連絡をいただきました」と心待ちにしている。

 2人の関係は日本リーグ時代までさかのぼる。岡田氏の古河電工(現千葉)と佐々木監督のNTT関東(現大宮)は1部と2部でカテゴリーは違ったが、電線などの取引関係で親善試合や懇親会がよくあったという。互いの引退後も交流は続き「コーチ修業で古河に行った時に岡田さんもコーチで、いろいろ教えてもらった」と佐々木監督。決戦前に“師匠”と再会する。

 男子が10年のW杯南アフリカ大会に出る前は、11年の女子W杯ドイツ大会出場を決めた佐々木監督が激励におもむいた。ほかにもA代表合宿を訪れる機会は多かったが「反対に来てもらうのは初めてじゃないかな」(佐々木監督)。その上で「聞きたいことはいっぱいありますね」と続けた。

 佐々木監督 岡田さんが提唱している「ニアゾーン」(サイドから低いパスを送り、ペナルティーエリア付近のスペースを攻略する戦い方)なんか、まさに、なでしこが採用させてもらってるもの。ほかにも掘り出せそうなもの(戦術)がありそう。楽しみですね。

 その岡田氏は今、FC今治でバルセロナの育成法をベースとした「型」=「岡田メソッド」を構築している。技術とコンビネーションを前面に出した攻撃的なポゼッションサッカー、日本人の強みである組織力を最大化する試み。旧知の佐々木監督には、秘訣(ひけつ)や世界の最新理論を明かす可能性もありそうだ。

 2度のW杯を経験したノウハウも注入する。岡田氏は98年フランス大会と10年南アフリカ大会を指揮。1度目の1次リーグ敗退から2度目は過去最高タイの16強に成績を押し上げた。一方、佐々木監督が率いた女子は11年ドイツ大会で初の世界一に。その上は、米国しか遂げていない連覇しかない。佐々木監督の重圧は計り知れないが、大舞台に2度立った岡田氏なら相談に乗ることもできそうだ。

 ◆W杯を2度経験した日本代表監督 男子は岡田武史監督、女子は鈴木保監督とそれぞれ1人ずついる。鈴木監督は91年中国大会で3連敗して1次リーグ敗退。続く95年スウェーデン大会は1次リーグでブラジルに2-1で勝利。準々決勝で米国に敗れたが、8強に進出した。佐々木監督は男女通じて3人目になる。