右膝故障から復帰したFW岩渕真奈(22=Bミュンヘン)が、エクアドル戦で存在感を見せつけた。後半35分、FW菅沢優衣香に代わって今大会初登場。短い出場時間ながらドリブルで停滞していた攻撃のリズムを変え、シュートも放った。期待のチーム最年少が、決勝トーナメントでの切り札に名乗りを上げた。

 岩渕が躍動した。離脱したブランクを感じさせず、いきなりドリブル突破で会場を沸かせた。後半40分にはゴール前で2トップを組んだFW大儀見のヒールパスを受けてシュート。テープでグルグル巻きに固めた右足を振り抜いた。GKの好セーブで得点には至らなかったが、戦力として計算の立った復帰戦となった。

 笑顔で「仕掛ける人がいなかったり、崩しにいく人が少ないなとベンチで感じていた。シュートにも持ち込めたし、自分の良さは出せた。1歩踏み出せたと思う」。佐々木監督は決勝トーナメントでの起用を示唆していたが、急きょ方針転換。指揮官は「いきなり厳しい場面ではなく、少しでも出そうとなった。我々の隠し玉になるんじゃないかな」と手応えを得た。

 本来、先発候補の1人だった。だが先月22日の丸亀合宿で右膝を負傷。2月に負った靱帯(じんたい)損傷の再発の可能性もあり、一時はメンバー変更も検討されたほど。「怖さがないと言ったらウソになる。ピッチに出たら言い訳してはいけない」。手加減することなくプレーして見せた。

 悔しい忘れ物がある。12年ロンドン五輪決勝の米国戦。決めれば同点の場面で1対1を外した。翌日の銀メダル会見では、人目をはばからず「自分が決めていれば…。悔しい」と涙した。メダルは今でもしまったまま。だが阻止されたシュート場面の写真だけは、自宅に飾ってバネにする。今季の所属クラブはブンデスリーガ優勝。自身も出場試合では負けなし。勝負運も身に付け、心身ともに強くなって帰ってきた。

 「ケガする前はスタートから出て、自分の大会にしたかった。今はとにかくチームに貢献する大会にしたい。1分でも多く出て、自分が点をとって勝ちたい」。大柄な欧米選手相手に、疲労がたまってきた時間帯こそ、155センチと小さく俊敏なドリブルが生きる。連覇への切り札として大きな期待を背負う。【鎌田直秀】

 ◆岩渕真奈(いわぶち・まな)1993年(平5)3月18日、東京都生まれ。関前SCから05年日テレ・メニーナ入団。07年ベレーザ昇格。08年なでしこリーグ新人賞。同年U-17W杯でMVPを獲得し、09年U-19アジア選手権では得点王およびMVP。12-13年シーズンにホッフェンハイムに移籍し、昨季はBミュンヘンの一員としてリーグ戦13試合3得点をマークして優勝に貢献した。国際Aマッチ通算26試合3得点。155センチ、53キロ。J3琉球の岩渕良太は実兄。