日本代表のMF香川真司(27=ドルトムント)が、首位突破へ導くスーパー弾を挙げた。既に最終予選進出を決めている日本は、W杯アジア2次予選の最終戦でE組2位のシリアに5-0で大勝。香川は後半21分、本田からのパスを胸トラップし左足ボレーで2点目をたたき込んだ。終了間際にも加点して2得点1アシスト。6大会連続のW杯出場へ大暴れした。この結果、9月に始まる最終予選の組み合わせ抽選(4月12日)は、第2シードに入る見込みとなった。

 大観衆の度肝を抜くゴールだった。1点リードの後半21分。ゴール前にいた香川へ、DFと競り合った本田から浮き球のボールがきた。胸トラップすると、瞬時に体を反転。左足ボレーで、ゴールに突き刺した。5万7475人が息をのむ。次の瞬間、会場が揺れるほどの大歓声が湧き起こった。2次予選の最終戦で、ワールドクラスの超スーパー弾を披露した。

 「すぐに反転して(動作の)全てがうまくいった。振り向いてのシュートを意識したので、流れのままいけた。結果を残すことを、自分自身に言い聞かせていました。2点目を決められたのは大きかった」

 “香川ショー”は終わらない。17日に27歳の誕生日を迎えたばかり。同41分には左ゴール前で切り返してDFをかわし、本田の得点をアシスト。とどめは同45分。1度はGKにはじかれたボールを、左足で押し込んだ。自らの誕生日を祝う2発に1アシスト。起点になったオウンゴールを含め、全得点に絡んだ。日本は前半1点止まり。もんもんとしていた空気を、ゴールラッシュへ結びつけた。Aマッチ通算25得点とし、背番号10の先輩、中村俊輔(横浜)を上回った。

 華やかさの裏側で、悩みを抱える。所属のドルトムントは優勝争いの佳境。だが、今年に入ってリーグ10戦中5試合で出番なし。もがき、苦しみながら、さらに成長しようと汗を流す。ドイツの自宅にはトレーニング室を完備。体幹をこれまで以上に鍛えた。練習から自主トレを終えて疲れ切ると、最近購入した“愛車”のセグウェイ(電動立ち乗り2輪車)に乗る。「キッチンに飲み物を取りに行く時とか、着替えをする時に乗っている。気分転換になりますよ」。自室内を自由自在に動き回る。

 「ドルトムントに戻っても結果を求めてやっていく。立場的に厳しいし、レベルは高いけれど、結果を残したい。W杯までも時間はない。どれだけ選手1人、1人が高い意識と危機感を持てるかにかかっている」

 10年W杯南アフリカ大会は帯同しながらも登録外選手扱い。初出場の14年ブラジル大会は、力を出し切れずに1次リーグで敗退した。屈辱を糧に臨む18年ロシア大会へ。香川はもっと、進化する。【益子浩一】

 ◆香川記録メモ 香川の1試合2ゴールは15年9月8日のアフガニスタン戦以来5度目。過去4度の会場はカタール、札幌ドーム、長居、イランで、埼玉スタジアムでは今回が初。これで通算得点は25点目で、MF中村俊輔の24点を抜いて日本代表歴代8位に浮上。この日の後半21分の1点目のゴールは本田からのアシストだったが、「本田アシスト→香川ゴール」は13年8月14日のウルグアイ戦以来2度目。その逆の後半41分の「香川アシスト→本田ゴール」は13年2月6日のラトビア戦以来2度目。