プレーバック日刊スポーツ! 過去の6月26日付紙面を振り返ります。2010年の1面(東京版)は本田カッコ良すぎ W杯決勝Tベスト4に連れて行ってくれるでした。

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<サッカーW杯:日本3-1デンマーク>◇1次リーグE組◇24日◇ロイヤルバフォケング

 【ルステンブルク(南アフリカ)=25日】日本代表のFW本田圭佑(24=CSKAモスクワ)が世界を驚かせた。引き分け以上で決勝トーナメント(T)進出が決まる1次リーグ最終デンマーク戦の前半17分、衝撃的な無回転FK弾を決めた。後半42分にはFW岡崎のダメ押しゴールをアシスト。1ゴール1アシストで3-1の快勝に貢献し、日本を02年日韓大会以来2大会ぶりの16強に導いた。日本は29日午後4時(日本時間午後11時)開始の決勝T1回戦で、南米の強豪パラグアイと対戦する。名実ともにエースとなった本田が、日本を目標の世界4強、その先の頂点へと押し上げる。

 目指す頂は、高い方がいい。本田には、岡田ジャパンが目標にするW杯4強、その先にある頂上がうっすらと見えた。決勝T進出だけで満足はできない。熱狂と、興奮に包まれたスタジアムで、日本のエースに上り詰めた男が、さらなる快進撃を約束した。

 本田 思ったほど喜んでいない自分がいる。目標はまだ、いくつも上ですから。オレは「優勝」すると公言している。その中で(優勝できると)思っていない弱い自分と、できると思う自分がいる。常に自分との葛藤(かっとう)。優勝すると公言しないと、弱い自分がどんどん大きくなる。メンタルコントロールしてまだ先に進みたい。

 世界を驚かせた。前半17分、右寄りの得意な位置でFKを得ると、無心で蹴った。無回転の弾道は、壁を越えて一直線にゴールに吸い込まれていった。民族楽器ブブゼラの音がかき消されてしまうほどの大歓声を受け、真っ黒な夜空に向かって両手を突き上げた。欧州CL・セビリア戦でもCSKAモスクワを8強へと導くFK弾を決め、W杯でも左足の威力を見せつけた。大舞台になればなるほど力を発揮する。後半42分にも大久保からパスを受けるとDFをかわして中央の岡崎へラストパス。1ゴール1アシストで、まさに本田が攻撃の中心に立った。

 本田も、日本も、半月前まではどん底にいた。慣れないFWを任され、W杯直前のイングランド戦、コートジボワール戦は前を向くことすらできなかった。「これほど個で通用しないのか。オレのサッカー人生はどうなるのか」-。日本も国際Aマッチ4連敗。すべてを失いかけたが、本田はどん底からはい上がる術を知っていた。

 幼少時代から倒されても、倒されても、何度も起き上がってきた。祖父満さん(78)は「気は強かった。とにかく負けず嫌い。兄と腕相撲して負けそうになると、勝とうとして涙をポロポロ流して泣いた」という。今も昔も、負けず嫌いは変わらない。優勝を公言しながら、簡単にあきらめるわけにはいかなかった。自分の実力を受け止めた時、本田は「オレが世界に通用する可能性があるのは、飛び道具(FK)しかない」と割り切ることができた。

 本田 オレが「FWらしくなってきた」と言われるのは、まだ早い。だけど、オレの前には仲間が誰もいないFWの景色には慣れてきた。極度の重圧も超えた。これからは1発、1発の勝負。神様がどれだけ運を与えてくれるか。自分たちがどれだけ運をつかむことができるか。そこにかかっている。

 決勝T1回戦でパラグアイを破れば、日本初の準々決勝の扉が開く。世界の頂が、確かに見えてくる。

※記録と表記は当時のもの