日本の新エースが史上初の偉業を達成した。FW原口元気(25=ヘルタ)が、後半35分にW杯アジア最終予選で4戦連発弾を決め、勝利を引き寄せた。今や代表の左FWの定位置をつかんだ25歳は、FWカズと呂比須の“レジェンド”を超える記録にも涼しい顔だった。献身的な守備でも貢献し、B組2位へ導く原動力となった。

 やはりこの男が決めた。1-0の後半35分。左からの折り返しをMF香川がヒールパスで少し変えたコースに反応し、右足を豪快に振り抜いた。9月のタイ戦からイラク戦、オーストラリア戦と得点を積み重ねてきた新エースが、レジェンドたちを超える4戦連発を達成した。終了間際に失点しており、原口の得点が事実上の“決勝点”となった。「特別な気持ちはない。日本が勝つことが一番だった。ゴールはおまけです。チームが勝ててほっとしている」。記録達成にも本人は冷静だった。

 今季ヘルタでは先発に定着し、日本代表でも9月から左FWが定位置になった。敵地オーストラリア戦では先制点を決めながら、ペナルティーエリア内でファウルし相手にPKを与え、「自分のミスがなければ勝ち点3が取れていた」と悔しがった。今回は得点だけでなく、高い位置でボールを奪う守備でも味方を助けることを心掛けた。「借りを返したかった。球際は詰めて奪うことができていた。攻守の切り替えの部分で、ヘルタでやっている自分の良さが出た。守備力は見せられた」と胸を張った。

 浦和ユースからトップに昇格し会場の埼玉スタジアムは故郷だ。ユース時代は得点を取るとすぐに満足してしまい、コーチから“ゴールへの貪欲さ”を教え込まれた。オーストラリア戦後、国内組より早い便で現地を出発する際、宿舎で浦和で一緒だった槙野の部屋に出向き、同室でゲームをしていた西川、柏木らに「今回もお世話になりました。お先に失礼します」とあいさつ。海外組として代表でプレーしても礼儀正しさは忘れていない。心身ともに伸び盛りの原口は、日本を救う新エースへの道を駆け上がっている。【岩田千代巳】