アジア・サッカー連盟(AFC)の年間表彰式が1日夜(日本時間同日未明)に、アラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビで行われた。リオデジャネイロ五輪日本代表の手倉森誠監督(49=現A代表コーチ)と、U-19(19歳以下)日本代表の内山篤監督(57)が年間最優秀監督賞(男子)の候補3人にノミネートされていたが、受賞を逃した。しかし、手倉森氏には「審査員特別賞」が贈られた。

 年間最優秀監督賞には、韓国の崔康熙(チェ・ガンヒ)氏(57)が輝いた。元韓国代表監督で、今季はKリーグの全北現代を率い、10年ぶりにアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)で優勝していた。崔氏との接戦の末、手倉森氏は最優秀賞を逃したが、今年1月のU-23アジア選手権カタール大会で初優勝した実績が認められ、審査員特別賞に。「1月にドーハの地で目覚ましい成功を遂げた。リオ五輪では1次リーグこそ突破できなかったが、その戦いぶりが多くの称賛を浴びた」と受賞理由が説明された。

 手倉森氏はAFCから招待されて、11月30日に千葉・成田空港から出国。「受賞できれば(東日本大震災の)被災地、東北へ贈りたい。恩返しをしたい」と話して旅立っていた。13年までJ1仙台の監督を務め、14年にU-21日本代表監督に就任。仙台では任期を1年間、残していたが、クラブから違約金なしで契約を解除してもらい、日の丸を背負う立場に転じていた。

 だからこそ「仙台、そして東北から自分は日本のために、と送り出してもらった。賞をもらって、被災地に感謝の思いを届けられれば」と強く思っていた。惜しくも受賞は逃したが、7つ星を自称するアブダビの高級ホテル、エミレーツ・パレスで開かれた晴れ舞台の大スクリーンに「審査員特別賞 Makoto TEGURAMORI」の名が示された。AFC関係者によると、崔氏に肉薄する高い評価を受け「審査員特別賞」が贈られたという。

 U-23代表を率い、リオ五輪アジア最終予選を兼ねたU-23アジア選手権カタール大会に出場した。選手たちは過去にアジア8強止まりが続いた谷間の世代だったが、前評判を覆して初優勝。初戦から決勝までの6試合で、先発を6人→10人→8人→4人→4人と入れ替え、10人で計15得点。負ければ終わりの最終予選でも、恐れることなくターンオーバーし、誰が出ても戦える一体感を醸成した。

 準決勝では、世代最強と呼ばれたイラクと対戦。相手は13年のU-20W杯で4強入りし、日本の同世代が1度も勝ったことがない天敵だったが、2-1で競り勝ち、6大会連続の五輪出場を決めた。決勝は韓国と激突。前半2点をリードされながら、後半に3得点。五輪最終予選で34戦連続不敗の記録を続けていた韓国に、大逆転で土をつけた。日本の五輪世代が、親善試合以外で韓国に勝つのは初めて。2点差をひっくり返しての逆転勝ちは、A代表を含めても日韓戦で初の快挙だった。この実績が評価され、ノミネートされていた。

 内山氏も、決して前評判が高くなかったU-19代表を率いてアジアの頂点に立った。今年10月のU-19アジア選手権で初優勝。これまで4大会連続で準々決勝で敗れていた大会で、5大会10年ぶりにU-20W杯への出場権を獲得した。手倉森氏と、どちらかが受賞すれば、日本人では98年桑原隆(磐田)08年西野朗(G大阪)10年岡田武史(日本代表)11年佐々木則夫(なでしこジャパン)以来5人目となったが、快挙は来季以降に持ち越しとなった。