W杯ロシア大会アジア最終予選タイ戦(28日、埼玉)に臨む日本代表のボランチに、本職がサイドバック(SB)のDF酒井高徳(26=ハンブルガーSV)が抜てきされる可能性が浮上した。26日、さいたま市内で行われた非公開練習で、ダブルボランチの一角として試された模様。MF倉田秋(28=ガンバ大阪)とともに、長谷部、今野と負傷者が続く位置の救世主となるか注目される。予選B組で日本は2位でタイは最下位。

 火の車の日本ボランチ陣に、チーム屈指の万能プレーヤーが起用されるかもしれない。2日後に控えたタイ戦に向けた非公開練習。複数の関係者によると、守備的MFに酒井高を入れてテストした。前線へ出すパスのタイミングや、周囲とのマークの受け渡し方などを確かめたという。

 主将の長谷部が右膝手術で、代役としてUAE戦の救世主になった今野は左足骨折。さらには高萩まで離脱した。本職が立て続けにチームを離れる中、ハリルホジッチ監督は新たな選択肢を模索。所属するハンブルガーSVで、本来のSBだけでなくボランチでも出場している酒井高を試すのは自然な流れでもあった。

 実際、今回の代表戦に合流する前、酒井高はクラブでは3試合連続でボランチ起用されている。持ち味は守備で、中盤の底で鋭い寄せと球際のデュエル(決闘)をいとわない。クラブでは昨秋から主将も務め、リーダーシップもある。前日25日が取材対応日だった本人も前向きで「ないと思う」と前置きしつつ「やらなければならない時はくるので、もちろん準備したい。与えられたポジションでやることがプロの仕事。いろいろなポジションをやっている。それが自分の売り」と意欲を示していた。

 酒井高のテストに合わせて、指揮官は戦術も変更。UAE戦では相手の長所を消すため4-3-3システム(アンカー+攻撃的MF2人)を用いたが、タイ戦では従来の4-2-3-1(ボランチ2人)に回帰する方針。この日も試したという。ボランチは山口が当確で、もう1枠を前回途中出場した倉田を筆頭に、酒井高、浦和から追加招集した遠藤で争う。

 酒井高はUAE戦で出番がなく「普段の練習から特徴を出してアピールしたい」と燃えていた。その特徴が万能性と守備力。これまで代表のボランチは人材豊富だったこともあり、起用されることはなかった。だが、窮地だからこそハリルホジッチ監督が決断する可能性は十分ある。

 ◆酒井高徳 さかい・ごうとく。1991年(平3)3月14日、米ニューヨーク州生まれ。父は日本人で母がドイツ人。新潟-シュツットガルトを経て、15年7月からハンブルガーSVで、今季途中から主将。国際Aマッチ32試合0得点。176センチ、74キロ。