新生ジャパンの初戦となる9月4日のパラグアイ戦(日産ス)が、代行監督体制で行われる可能性が9日、浮上した。交渉のため渡欧中の日本サッカー協会・原博実強化担当技術委員長(51)が、小倉純二会長(71)に電話で「簡単ではない」と報告したことが分かった。このまま交渉が難航すれば、新生ジャパンの晴れ舞台は、原委員長が代行で指揮を執る可能性も。W杯南ア大会の好成績に加え、因縁のパラグアイ相手、新体制の初陣と、好材料がそろうはずの一戦が、拍子抜けの“消化試合”になるかもしれない。

 「世界」を相手に日本が苦戦している。W杯では16強入りを果たしたが、代表監督選びは思うように進まない。原委員長は、7日の夜と9日の朝の2度、小倉会長と大仁副会長に電話を入れ「簡単ではない。アポイントがうまく取れていない」と弱気の報告をした。

 原委員長が、次期監督候補としてリストアップしているのは、ビクトル・フェルナンデス氏(49)を筆頭に、マルコ・ファンバステン氏(45)とエルネスト・バルベルデ氏(46)の3人。現在、フェルナンデス氏はスペインリーグ・ベティスと契約不履行問題で訴訟中で、ファンバステン氏はバカンス中、バルベルデ氏は、ギリシャのオリンピアコスと契約秒読み段階と、いずれも本人との接触は難しい状況だ。

 小倉会長

 なかなか進展していないみたいだね。バカンスとかあって、相手に会うのも難しいから。パラグアイ戦に間に合えばベストだけど、間に合わなければ(監督代行で)大仁でも田嶋(ともに副会長)でもいい。15日までに決めるのは、難しいだろう。期限は決めない。20日ぐらいになっても構わない。原には「4年先の監督を決めるんだから、目先のことは気にするな」と伝えている。

 15日までに監督が決まらなければ、ビザ発給の問題などがあり、パラグアイ戦は指揮が執れない可能性が高い。その場合、Jで監督経験があり、W杯南ア大会に同行し、それまでJを視察してきた原委員長が代行で指揮を執ることになりそうだ。

 スポンサーのキリンビール側は「協会から代行の話は聞いていない。今は新監督が指揮を執るとしか考えていない」と、代行体制は考えたくもない様子だ。中継局の日本テレビ側は「強化試合として放送するのに、その試合に新監督がいないのは、説得力に欠ける」と困惑する。

 今までの代表監督人事は、外国人の場合、日本をよく知る海外サッカー関係者の紹介か、Jで指揮を執った監督を選んできた。紹介なしで交渉に当たるのは、今回が初めて。小倉会長は「日本はそんなに金が出せないし、今はクラブの方を好む監督も多い。それでも、世界の土俵に上がって監督を選ぶことはすごいこと。交渉しているだけでも評価できる」と、苦闘している原委員長、技術本部長の大仁副会長をかばった。

 パラグアイ戦までは1カ月を切った。仮にギリギリで監督が決まったとしても、じっくり選手選考をしている時間はない。新生ジャパンは、不完全なままで船出を迎えることになりそうだ。