W杯南アフリカ大会の日本代表DF田中マルクス闘莉王(29=名古屋)が、鹿島のオズワルド・オリベイラ監督(59)を次期日本代表監督に推した。24日、監督候補と交渉している日本サッカー協会の原博実強化担当技術委員長(51)が帰国。監督決定に至らず、新生ジャパン初戦の9月4日パラグアイ戦(日産ス)は自ら代行監督を務めることを発表した。この非常事態に闘莉王は「どれだけ時間を無駄にするのか」と危機感を強め、Jリーグ3連覇の実績と、14年W杯がブラジル開催であることを含め「オリベイラさんがいい」と提言。混迷する後任監督人事に一石を投じた。

 闘莉王が突然、熱弁を振るった。愛知・豊田市内でのチーム練習後、難航している監督問題について初めて口を開いた。真っ暗になった駐車場で突然、同じブラジル生まれのJリーグの名将、鹿島オリベイラ監督を推薦した。

 闘莉王

 オレはオリベイラさんがいいと思う。日本人を知っている人じゃないと。(Jリーグで)結果を残していることはみんなが知っている。素晴らしい人。日本の選手みんなを把握している。

 ちょうどこの日の練習中に東京・本郷のJFAでは、ドタバタ会見が行われていた。原委員長が、技術本部長の大仁邦弥副会長(65)と後任監督についての経緯を説明。交渉が難航し、9月の親善試合2試合で原委員長が監督代行を務めることを発表した。

 この非常事態に、代表の不動の主力でもある、闘莉王は黙ってはいられなかった。オリベイラ氏は、鹿島で昨季までJリーグ3連覇を達成するなど手腕は確か。闘莉王は日韓対抗で行われた08年のオールスター、JOMO杯でJリーグ選抜の一員として同監督のもとでプレーした。「短期間で素晴らしいチームをつくった」と、その指導力を肌で感じてもいる。キーワードは自身と同じ日本とブラジルだ。「他の候補の人の文句を言う訳ではない」と、断った上でこう続けた。

 闘莉王

 次の監督はスペイン人だとか言われているけど、次のW杯はどこでやるか知ってる?

 ブラジルだからね。

 日本を知り、そして勝負の舞台となる4年後のブラジルもよく知る。この点が、今回の猛プッシュの根拠だ。主力としてW杯16強まで勝ち上がった南アフリカでの「財産」を継続させたい気持ちも強い。

 闘莉王

 岡田監督がやってきたことにプラスできる人じゃないと。(岡田ジャパンの)何が良かったかと言えば、まとまり。だから、日本人の心を知っている人じゃないと。

 南アでは結果を残すと同時に、世界トップとの力の差も思い知らされた。ライバル国は4年後に向けてすでに始動している。国際サッカー連盟のサイトによると、今年のW杯出場32カ国で監督が未定なのは日本と北朝鮮だけ。「犬飼さんがいなくなったら何も決まらない」と、日本協会の犬飼基昭前会長(68)の不在を嘆き「時間をどれだけ無駄にするのか」と発言。代表選手の胸の内を代弁するかのようだった。

 自身の代表入りについては「今は名古屋を優勝させることしか考えられない」とけむに巻いたが、日本を愛し、強くしたいからこその提言。オリベイラ・ジャパンが実現するかどうかは別にして、闘将の熱い言葉は、届くのだろうか。【八反誠】