サッカーの日本代表選手が、日本協会と代表試合報酬などを巡って対立していることが17日、分かった。日本代表の勝利給が、世界基準より低すぎることなどから、選手側が反発。日本プロサッカー選手会(JPFA)が、選手の代表として今後も交渉を続けるが、日本協会が歩み寄りの姿勢を見せない現状が続くと、来年3月25、29日に予定している親善試合は、ボイコットによる開催不可能になる可能性もある。

 日の丸を背負った熱い戦いの裏で、さらに激しいバトルが繰り広げられていた。選手側が、勝利給アップ、肖像権保証、負傷時補償の明文化などを要求し、それに対し協会側は返事を保留して平行線をたどる攻防が続いていることが分かった。不満を募らせた選手側は、最後の手段として、代表招集ボイコットのカードに手を伸ばし始めた。

 JPFAの松本泰介顧問弁護士は「W杯前から選手たちが原技術委員長に何度も改善を求めて、その場では『改善する』と返答をもらっているが、その後ずっとペンディングの状況が続いている。選手会としても正式に申し入れているが、まだ具体的な回答はない。次の手を考えないといけない」。JPFAの清岡哲朗執行役員は「このままだと、W杯ブラジル大会の予選に影響しかねない。その前に何とかしないと、大変なことになる」と話した。

 日本代表は27日からアジア杯(来年1月、カタール)に向けた国内合宿に入る。その初日に、松本弁護士らが選手宿舎に出向き、全選手を集めて、今後の対応策を協議する予定だ。既に9月のパラグアイ戦前の合宿中にも、代表宿舎で選手全員の意見を聞いており、選手の総意として「これから代表に入る後輩たちのためにも、徹底的に戦ってくれ」と言われている。

 実は、W杯南アフリカ大会直前のスイス・ザースフェー合宿で、選手と協会の第1次攻防があった。全選手がホテルのミーティングルームに集まり、大仁邦弥副会長と原博実技術委員長に改善を要求した。勝利給などが欧州のサッカー先進国の半値以下という現実を挙げ、あるベテラン選手が「協会から支払われる金額が02年W杯からまったく変わらない。もちろん代表は名誉なことで、国のため、自分のため頑張ろうとはみんな思っています。みんなプロだし、人生かけて戦っている。協会としては他の国と同等の評価をしてほしい」と主張するなど、1時間以上激論を交わした。その席で大仁副会長は「検討します」と伝えている。W杯後、当時の犬飼基昭会長の判断で300万円の特別ボーナスが支給されたが、会長交代もあり、根本は改善されていない。

 大仁副会長

 ザースフェーで選手と話し合ったことは事実です。協会としては、これからも選手から話があるというなら、聞きます。話は聞きますが、協会としての決まりがあるわけだし、協会としての立場も伝えていきます。

 現在、代表は出場給はなく、日当1万円と対戦相手のFIFAランクによって勝利給が支払われるのみ。パラグアイ戦(9月4日)で15万円、アルゼンチン戦(10月8日)で20万円、引き分けた韓国戦(10月12日)は5万円(勝てば10万円)が支払われた。これは韓国の勝利給約30万円に比べても、確かに安い。名前入りの代表ユニホームが売れても、肖像権が認められていないため選手個人には還元されない。代表でケガしてチームに戻って試合に出られず、出場給などがもらえなくても、その補償もない。

 このほど協会は「こちらも弁護士を立てます」と通告し、対立の構造へ。溝が深まれば、選手が出せる最後のカードはストライキしかない。松本弁護士は「W杯予選とかの公式戦ではできません」というが、スポンサー冠の大会で、招集ボイコットの可能性は十分ある。深い溝のままでは、目前に迫ったアジア杯はもちろん、来年9月から始まるW杯ブラジル大会予選にも影響を及ぼすことは間違いない。