<W杯アジア3次予選:日本8-0タジキスタン>◇C組◇11日◇大阪・長居スタジアム

 香川が完全復活だ!

 日本代表(FIFAランキング15位)がタジキスタン代表(同124位)を下した。2勝1分けで勝ち点を7に伸ばしC組首位。次戦来月11日のタジキスタン戦(ドゥシャンベ)に勝ち、ウズベキスタンも北朝鮮に勝てば、3次予選突破が決まる。これで日本代表は15戦連続負けなし。FW香川真司(22=ドルトムント)は前半41分、MF中村のスルーパスに反応、右のつま先で合わせる高度なシュートを決め、後半にも得点。FW本田不在の中、「ホッとした」という代表では4試合ぶりの1試合2得点で、本来の躍動感を取り戻した。

 忘れかけていた快感がまざまざとよみがえった。C大阪時代に24得点を挙げた思い出の地・長居で、香川が完全復活を遂げる2得点。今季、不調にあえいでいた日本代表の背番号10が、かつての庭でようやく息を吹き返した。満面の笑みでスタンドに手を振る姿が、復調を何よりも物語っていた。

 香川

 ドルトムントでは苦しかったけど、結果が出ると信じてやった。自分の(かつての)ホームスタジアムだったので、点を決められてうれしい。憲剛さんがためを作って、走る時間を作ってくれた。きょうは結果を求めていたので、2点取れたことで精神的にホッとした。いい結果を残せて、ポジティブにドイツに帰れる。

 まさにワールドクラスの得点だった。前半41分。香川は左サイドにいたMF中村からのスルーパスに走り込むと、背後から迫ってくるボールを右足の外側の先でしっかりととらえ、ゴール左上にぶち込む超高度な復活弾。「試合前から話をしていて、お互いの共通意識がゴールにつながった」。これまで日本代表では香川の特徴を生かすスルーパスの出し手はMF遠藤だけだったが、中村とのコンビ結成はザックジャパンにとっても新たな収穫となった。

 後半23分にもMF遠藤からのパスを右サイドで受け、クロス気味のボールでゴール左隅に7点目を決めた。「ファーを狙ったつもりが、ぶれたりしてゴールにつながった。ガッツポーズすればよかったですね」と苦笑いだったが、8月10日の日韓戦以来、4試合ぶりの2得点で不振の呪縛を解いた。

 復活を賭けた一戦だった。今季リーグでは出場7試合でわずか1得点。ベンチスタートとなった1日のアウクスブルク戦ではドイツ移籍後初めて、ケガ以外で出場機会を与えられず、親しい知人には「むしろ外れてよかったと思う」と漏らした。

 「今までのサッカー人生で一番苦しい」。7日のベトナム戦でも本来の動きは影を潜めた。自分の不調と真摯(しんし)に向き合った。時間を見つけて散髪し、髪のサイドと襟足をカットして気分を変えた。昨季ドルトムントで大活躍した時に愛用していた黄色のスパイクを選んでこの日の2得点。試合終了の笛が鳴ると、ピッチで両手拳を静かに握り、1人喜びをかみしめた。

 次は11月にアウェーでの2連戦が待っている。次戦で日本がタジキスタンに勝ち、ウズベキスタンが北朝鮮を破れば3次予選突破が決まる。「アウェーはもっと厳しくなる。その中でしっかりやりたい。自分次第だと思うし、次の試合も結果を出し続けたい」。これだけで満足はしない。長居で復活を遂げた男は、次も敵地で大爆発し、ザックジャパンを最終予選進出へ導く。【福岡吉央】