<W杯アジア3次予選:日本4-0タジキスタン>◇C組◇11日◇ドゥシャンベ・セントラルスタジアム

 日本代表(FIFAランキング17位)が2014年W杯ブラジル大会アジア3次予選突破を決め、最終予選に進出した。格下のタジキスタン代表(同130位)を相手に、DF今野泰幸(28=東京)の先制点を足掛かりに快勝。同じC組のウズベキスタンが北朝鮮を下し、日本とウズベキスタンが3次予選を通過した。日本代表は前半36分、今野が史上2番目に遅い国際Aマッチ通算54試合目での得点を決め、アウェーの呪縛を解く活躍を見せた。

 思わず駆けだした。重苦しいアウェーの雰囲気をぶち破る先制点は、出場54試合目の今野の、遅い代表初ゴールだった。

 前半36分。MF中村のシュートのこぼれ球を蹴り込んだ。我を忘れて派手にベンチ前まで走ったが、そこはチームの愛すべきいじられ役。仲間は思ったほど素直に駆け寄ってきてくれなかった。

 「ちょうどアウェーのアジアでの戦いは難しいな、と感じていたところだったので、ゴールが決まって興奮した。でも、すぐに超恥ずかしくなった」

 昨年のW杯の帰国会見で同僚のDF闘莉王をまねた「集まれ~」で爆笑のおお滑りしたのと同様、パフォーマンスのウケにキレはなかった。ただ、その価値は絶大。史上2番目に遅い伏兵のゴールが、劣悪なピッチと相手の勢いに押され気味の日本を救った。

 ホームでの対戦とは見違えるような相手の迫力に押され、同32分には相手のシュートがポストをたたく危ないシーンもあった。この1点が流れを変え、後半3得点の呼び水になった。2得点のFW岡崎も「コンちゃん(今野)が決めてくれたのがデカかった」と、素直に主役を譲った。

 仕事は守備。ザックジャパンの最終ラインに構えるセンターバック(CB)として、若い相棒のDF吉田をリードする。長く日本のCBを務めた闘莉王、中沢に代わる役割を担いつつ、吉田を頼れる大型CBに導いている。

 1カ月前の対戦で、同じDFの駒野が代表史上最も遅い65試合目でのゴールを決めた。無得点の仲間に置いていかれた。だが、悔しさがわき上がるどころか「オレが抜いてやろう、本気で100試合(無得点)くらいの記録をつくろうと思っていた」という。なぜか。それは、CBのプライドの裏返しでもある。

 「正直、得点に対して貪欲な気持ちがなくなっている。それは、CBとして無失点に封じることに、快感を感じるようになっていたから」

 狙っていた記録は途切れたが、チームを救ったのだから悔しくはない。それも、無失点勝利だった。こんな仕事人が最終ラインに構えるのだから頼もしい。ピッチ、環境、異様な雰囲気。厳しい未知なるタジキスタン。アウェーの地で、派手さはないが、普段は地味な男の働きが光った。【八反誠】