今年のユニバーシアード中国大会で得点王になった早大FW大滝麻未(22)が、イングランドの名門アーセナル入りすることが濃厚になった。29日、「TOYOTA

 Vitz

 Cup」(30日、東京・国立競技場)のため来日したアーセナルの都内での練習に参加。強化担当も兼務するローラ・ハーベイ監督(31)から高評価を受けた。大滝も英国行きを熱望しているため、契約へ一気に加速しそうだ。U-19(19歳以下)女子日本代表のFW横山久美(18=東京・十文字高3年)も大滝とともに練習参加してアピール。2人の移籍が実現して欧州で活躍すれば、来年のロンドン五輪の、なでしこジャパンの秘密兵器になるかもしれない。

 全国的には無名の大学生が、いきなり欧州の名門アーセナルの門をたたきそうだ。INAC神戸-アーセナル戦の前日練習。ピッチにはアーセナルのユニホームを着た大滝がいた。172センチの長身。大型選手ぞろいのチームの中でも、その体格は見劣りしない。控え組のFWに入った紅白戦では、長い足を武器に、DFを振り切ってシュートを放つなど、持ち味を発揮。「楽しかった。やれることはできたと思う」と満足げな表情をみせた。

 得点能力は大学女子サッカー界では群を抜く。9月のユニバーシアード中国大会では、準々決勝のカナダ戦での4得点をはじめ計8得点を量産。得点王となり準優勝の立役者になった。大学日本一の早大で1年生からレギュラー。08、10年には関東大学リーグでも得点王に輝いた。大学リーグ関係者は「なんでもできるFW。身体能力も高いし、イングランドでも活躍できる資質」と高評価する。

 英語が話せることも強みになる。大学2年の09年9月、ユニバーシアード・ベオグラード大会での活躍が認められ、カナダの強豪ヨーク大学から誘いを受けた。約2カ月半だったが、英会話を習得。同国の大学選手権で全国優勝に貢献するだけでなく、14戦14発で得点王。MVPも獲得した。

 練習後、ハーベイ監督は「あみはグッドコンディション。プレーもすばらしい」と高評価。獲得に関しても「英国に連れて帰るかもしれない」。まずは今回の日本遠征に引き続き帯同させる。12月1日の練習や、同2日の武蔵丘短大との練習試合にも参加させる予定。イングランドはほとんどの選手がアマチュア契約のため、獲得となれば現地の大学院を受験し、プレーする。英国での活躍が認められれば、地元ロンドン五輪18人の秘密兵器にもなる。

 なでしこジャパンは海外クラブ経験者が数多く名を連ねている。MF沢、宮間らは米国。現在もFW永里、安藤、DF熊谷はドイツで活躍し、DF鮫島、MF宇津木はフランスでプレーしている。だが、これまでは欧米トップクラスのクラブへの移籍はなでしこリーグでの経験を認められてからの移籍がほとんど。高校、大学を卒業後、いきなりの挑戦は皆無だ。今後の女子サッカー界にとっても、飛躍の道となる可能性が秘められている。【鎌田直秀】

 ◆大滝麻未(おおたき・あみ)1989年(平元)7月28日、神奈川県生まれ。横須賀シーガルズ-早大。11年ユニバーシアード中国大会では得点王となる8得点を挙げて準優勝に貢献した。U-19日本代表、U-20日本代表などで年代別代表にも選出された。趣味はギター、ピアノ。172センチ、61キロ。

 ◆横山久美(よこやま・くみ)1993年(平5)8月13日、東京都多摩市生まれ。17多摩SC-鶴牧SC-FC多摩-スフィーダ世田谷SC-十文字高。07年U-15女子ナショナルトレセン関東地区選手に選出。08年7月なでしこチャレンジプロジェクト選出。09年U-16日本代表。10年U-17女子W杯準優勝。シルバーボール(大会優秀選手)、ブロンズシューズ(得点ランキング3位)受賞。155センチ、50キロ。