日本代表に強い自我が芽生えてきた。前日3日のW杯アジア最終予選オマーン戦での白星発進から一夜明けた4日、代表チームは埼玉県内で調整した。DF長友佑都(25=インテルミラノ)は先制アシストを含め活躍したが、快勝の内容に「決して最高のスタートではない」と戒めた。その裏には、世界基準を知り現状に満足できない「オレ」がいた。

 前夜に挙げた勝利の余韻を、長友の一言が一刀両断した。3-0の快勝、シュート1本に抑えた内容、何より難しい初戦を白星スタートで飾った結果にも、満足感はなかった。約1時間のクールダウンを行った後、長友は言った。「決して最高のスタートではない。最高の内容なんかではない」。ミスからカウンターを食らうピンチは少なからずあった。もっとゴールを決められるチャンスもあった。世界基準の戦いを知るからあえて強く言う。

 2年前のW杯を戦い、今季はシーズンを通してインテルミラノという世界的強豪クラブでプレーしてきた。だからこそ感じるアジアとのギャップ。2度目の最終予選でさえ、緊張感は感じていた。それでも、硬直する試合展開が予想される中、序盤から1人果敢に左サイドを攻め上がり、先制アシスト。170センチのチーム一小さい背中で引っ張ることができたのも「イタリアでの経験が大きい。ミラノダービーや、ギリギリの戦いをしてきた」という自負があるからだ。

 W杯の短期決戦以上に、各国の代表が集まるシビアな場所に身を置いてきた。「W杯よりもクラブの方がレベルは高いと思う。常に一緒にプレーしているわけだから。そういう意味で個人としてもチームとしても熟成している」。精度の高いパス、プレスをかけるスピード、肉と肉がぶつかる球際を、欧州CLなど世界の舞台で味わった。だから香川に合わせて動けるし、本田にクロスを合わせられる。FIFAランク92位のオマーンに快勝したくらいで納得はできない。

 合宿初日にMF本田が11人に求めていた「オレが中心」というメンタリティーが、徐々にチーム内で芽生えつつある。「世界で戦うためにはやらないと」と長友。世界を知る男が言っている。聞き流して勝利に酔っていたら、いつか痛い目を見る。【栗田成芳】