<W杯アジア最終予選:日本6-0ヨルダン>◇8日◇埼玉

 日本が本田の3得点でW杯アジア最終予選2連勝を飾った。日本代表(FIFAランク23位)はホーム埼玉スタジアムでヨルダン代表(同80位)と第2戦を戦い、MF本田圭佑(25=CSKAモスクワ)がハットトリックを達成するなどで大勝した。最終予選でのハットトリックは1997年のFWカズ(三浦知良、45)以来、日本代表史上2人目。過去4度の最終予選で未勝利だった鬼門2戦目のジンクスも、2戦連続ゴールの本田が打ち破った。きょう9日、次戦(12日)に向け、アウェーの地オーストラリアに向かう。

 軽々と、これまでの自分を超えていった。本田が後半8分までに3得点しプロ入り後初のハットトリックを達成。点取り屋の本能が覚醒した。大勝ムードの中、3得点1アシストの結果でお役御免となり、同12分に早々と交代。ザッケローニ監督の耳元に口を持っていき「オレは4点目を取りにいきたかった」と悔しがった。これが本音だった。

 序盤からマンマークを受けたが、存在は消えなかった。前半22分に決めた1点目はMF遠藤のスルーパスに反応し相手DFに走り勝ち、後方からのボールを左足で流し込んだもの。瞬時にトップギアに上げスピードで相手DFの前に出た。「オレは走っただけ。ヤットさん(遠藤)のゴールと言ってもいいくらい」。こう振り返ったが、この得点パターンはこれまでなかった形。最終予選前に予告していた“ニュー本田”。ピッチ外で座り込んで、両腕を突き上げて喜んだ。

 半年以上もピッチから離れるけがを負っても「オレにとってはケガしたことが成功だった。ケガしたことで世界一に近づいたと思っている」と言い切る思考。貪欲にゴールを狙い続けた。同31分には左足で国際Aマッチ通算34試合目で初の複数ゴール。後半8分にはPKで3点目。FW前田が得たPKだったが、ボールを抱えてスポットに一直線。奪い取るようにして蹴り込んだ。相手を「打ちのめす」と宣言していた通りの結果を出した。

 1年前。ロシアでのシーズンを終えて成田空港に帰国した。その足で東日本大震災の被災地に向かった。地元の子どもたちとも触れ合った。胸に刻んだ思いは個人での5000万円の寄付や公式サイト上に立ち上げた基金での慈善活動に向けた。何より、子どもたちの目を見て今後が気になった。

 「今後たくましい気持ちで、将来の厳しい人生の競争を勝ち抜いていくために、オレができることは何なのか」

 1年近く頭を悩ませ、慈善活動で集まったお金で贈ると決めたのはフットサルコート。自分と同じように、ピッチ上で戦い、勝ち抜いてほしい-。そんな思いを託した。

 代表の成長ぶりについて問われると「まだまだ。伸びしろはマックス(最大限ある)。そういう代表だし、それが今の代表のいいところ」と返した。6月の序盤3連戦が目標。2戦を終え計4ゴールで2連勝へと歩みは順調だ。「次のオーストラリア戦に勝てば、突破が近づく」。この男に率いられた日本は間違いなく強い。【八反誠】

 ◆ハットトリック

 本田がAマッチで自身初のハットトリックを達成。日本代表の国際Aマッチでのハットトリックは、FW岡崎慎司が昨年1月17日のアジア杯1次リーグ・サウジアラビア戦で達成して以来、通算20人目、33回目。W杯最終予選では、FWカズ(三浦知良)が、98年フランス大会予選の97年9月7日ウズベキスタン戦で4ゴールして以来、2人目。