<フットサルW杯:日本5-5ポルトガル>◇4日◇タイ・ナコンラチャシマ◇1次リーグC組

 日本が、チーム一丸で奇跡のドローに持ち込んだ。W杯の1次リーグ第2戦でポルトガルと対戦し、5-5で引き分けた。後半のパワープレー戦法が功を奏し、最大4点差を追いつくまさかの展開。この戦法となってから出番がなかった三浦知良(45=横浜FC)のチームへのリスペクトもあり、大きな勝ち点1を得た。1分け1敗で勝ち点1の日本は初の1次リーグ突破をかけ、7日にリビア戦(バンコク)に臨む。

 試合終了のブザーが鳴ると、日本の選手は勝ち誇ったかのようにガッツポーズを連発した。その中にカズの姿もあった。満面の笑みで仲間と手を取り合う。劇的な幕切れに、多くの日本人サポーターで青く染まったスタンドもお祭り騒ぎだ。カズは「めったにないことですよね。日本の一番良い持ち味を出せた」と興奮気味に振り返った。

 2-5で迎えた後半残り8分40秒を経過したあたりから、日本はパワープレーに出た。GKをFPに変え、5人全員で攻め上がる。すると、そこから2分も経過しないうちに北原、森岡が立て続けにゴール。そして残り4分12秒、森岡のパスを受けた逸見が右足で起死回生の同点弾をたたき込んだ。残り4秒には、GKユニホームを着たFP小曽戸が相手シュートを右手1本でセーブした。防戦一方の前半とは正反対の展開。勝ちに等しい引き分けで、過去3戦全敗だったポルトガルから大きな勝ち点1をもぎ取った。

 前半に2度出場し、合わせて4分54秒間の出場だったカズ。パワープレーとなってからはベンチに座り続け、最後まで出番はなかった。ロドリゴ監督は「本当のスペシャリストじゃないとあのプレーには対応できない」と説明した。試合終了直後、その言葉をカズに伝えると、カズは「気にしないで。ファミリーのためにベストの決断をしてください」と返したという。ロドリゴ監督は「彼がそういう話をしてくれたことが、今後のフットサルのためになる」と話した。

 日本がこの戦法を初めて実践したのは5月の中国遠征。その時カズは不在で先月の国内合宿では、この戦法の際は出場しない方針を確認していた。戦略要員から外れるのは当然。カズは「そんなの当たり前のことですよ。自分はフットサルの経験が少ないんだし。自分は試合に出ても出なくても、役割は分かってるんで」と言った。ベンチでも、手をたたきながら大声で仲間を鼓舞した。

 前半には、名古屋に所属するFPリカルジーニョと右サイドで対面し、自身の得意技でもある「またぎフェイント」を見せられ、そのままゴールにつなげられてしまった。コートで苦笑いを浮かべたカズは「バカにしてるようなプレーをしてきましたね。でも彼は世界一の選手なんで。それはそれで楽しかった」と相手を称賛した。得点には絡めなかったが、チームメート、そしてフットサルという競技への心からのリスペストで劇的ドローに貢献した。

 カズ

 フットサル界にとっての夢は、僕のゴールじゃないんで。自分がチームに入って、チーム力が上がって、予選を突破することですから。

 リビア戦に勝てば史上初の1次リーグ突破が決まる。キング・カズとともに、日本が歴史を切り開く日がやって来た。【由本裕貴】

 ◆パワープレー

 フットサル界では、試合終盤に点が欲しい場面で使用されることが多い。5人全員で攻め上がるため、ゴールががら空きとなり、逆にカウンターを許した際に失点するリスクがある。ただし1人は本業ではないもののGK扱いのため、ペナルティーエリアでは手を使うことができる。