日本代表MF本田圭佑(26=CSKAモスクワ)が異例の練習パートナーを呼び寄せ、国内で極秘始動していたことが11日、分かった。沖縄県内で自主トレ中の本田を日刊スポーツが独占キャッチ。アフリカから09年東京マラソンの覇者サリム・キプサング(33)ら2人のケニア人を招き「走り」を磨いていた。長距離の世界的陸上選手との超異色コラボ。公言する「W杯優勝」に向け、2013年のスタートを切っていた。

 本田がいた。曇り空のピッチで、軽やかな身のこなしの黒人アスリート2人と走っていた。昨年12月23日の福岡県内でのサッカークリニックを最後に、公の場に姿を見せていなかった本田を探し、たどり着いた先はカーラジオから台湾のものと思われる外国語放送が聞こえる沖縄の島だった。

 本田はウオーミングアップからずっと2人と一緒だった。準備が整ったのか、英語で「Here

 we

 go(さあ、行こう)」と声をかけると、並んで短距離ダッシュに入った。

 細身でスッと加速するパートナーは、何とケニア人の世界的な長距離選手だった。1人は09年東京マラソンの覇者キプサング。世界ジュニア選手権1万メートルで2位になったこともある実力者。もう1人は11年大阪マラソンの覇者エリジャ・サング(29)。サングが制した大阪マラソンはキプサングが3位に入っている。日本人最高位の4位は、あの公務員ランナー川内優輝(25=埼玉県庁)だった。川内に勝った男たちをパートナーに、本田は「走り」を磨いていた。

 練習後、本田はひと言だけ口にした。ケニア人を招いた意図に、ヒントのような答えだけを返してきた。

 本田

 刺激、刺激です。

 本田はいつも自らを引き上げるための「刺激」を求めている。今回取り組んでいる「走り」は、本田というサッカー選手の課題の1つといえる。フィジカルの強さと確かな技術、戦術眼には定評がある。しかし、ここという場面でギアを上げられる走法、そしてスピード、こと「走り」にかけてはまだまだ改善の余地がある。

 酷暑の中、無残な姿をさらした昨年11月のW杯アジア最終予選オマーン戦(アウェー)も、その課題と無関係ではないだろう。42・195キロを2時間10分前後で走る2人は、スピードとスタミナを併せ持つ「走り」のプロ。隣で息づかいを感じ、リズムと身のこなしを体で覚え込ませるつもりのようだ。

 パートナー2人の招聘(しょうへい)は本田の発案。用具契約を結ぶ大手ミズノ社が陸上界にも強いつながりを持つことから、スペシャリストを招く仰天プランをぶつけた。同社の協力もあり、わざわざケニアから呼び寄せた。関係者の話を総合すると自主トレは年明け間もない3日にスタートしていたようで、すでに9日目だった。年明け早々、極秘裏に考えもつかないようなトレーニングに取り組む本田は、2013年も止まらない。【八反誠】

 ◆本田の今後の予定

 所属のCSKAモスクワは冬季のリーグ中断中。チームは17日にスペインに飛び、リーグ再開に向けた合宿をスタートさせる。本田も合流時期を調整しながら、1月中には日本を離れるとみられる。欧州の冬の移籍市場が閉じる1月末までにビッグクラブへの移籍がまとまれば新天地へ。残留ならCSKAのスケジュールに沿って、3月10日のリーグ再開戦クリリヤ戦(アウェー)への準備を進める。なお、日本代表の国際Aマッチの13年初戦は2月6日ラトビア戦(ホームズ)。

 ◆サリム・キプサング

 1979年12月22日、ケニア生まれ。99年世界ジュニア選手権(フランス)1万メートル2位。同種目で03年世界陸上パリ大会にも出場。マラソンに転向し05年パリ優勝、07年ベルリン3位、09年東京優勝。マラソン自己ベストは2時間7分29秒。173センチ、59キロ。

 ◆エリジャ・サング

 1983年10月18日、ケニア生まれ。07年フランクフルトマラソンで自己ベストの2時間10分13秒を記録し7位。11年大阪は2時間12分43秒で優勝し同マラソンの初代王者に。172センチ、57キロ。