「本田VSザック」、ピッチ上で2人が“激突”した。14日の国際親善試合ウルグアイ戦に向けた合宿が12日、宮城県内でスタート。公開された初日の戦術練習からFW本田圭佑(27=CSKAモスクワ)とアルベルト・ザッケローニ監督(60)が互いに激しいアクションを交え、ピッチ中央で約20分間も論争を繰り広げた。「W杯優勝」を公言するエースと指揮官の、けんか腰にも映るド迫力のトップ会談。その熱気に、周囲は完全に圧倒された。

 本田とザックが向き合いやり合った。互いに激しい身ぶりで、プレーの動きを示しながら激論。練習中から断続的に続いた論争は、全体練習終了後にヒートアップ。通訳はいたが完全に2人の世界。10分、15分…。まだ終わらない。居残り練習していた選手も次々と引き揚げる。残された選手とスタッフも気おされたのか遠巻きに見つめるだけ。開始から約19分30秒たち、ようやく納得したのか本田が3度うなずいた。2人で歩きながらまだ話し、最後は本田が硬い表情でピッチを後に。開始からちょうど20分が経過していた。

 取材エリアで本田は「お疲れさまです」とだけ話し、質問には足を止めなかった。指揮官の取材対応はなし。真相を知る矢野通訳は「勘弁して下さい」とだけ言った。練習開始前の子どもたちとの交流会に、読み解くヒントが。小学生からの「世界に通用するサッカーを教えて下さい」との質問に、本田はコンフェデ杯での手応えという形で「相手がボールを保持している時に前線からどれだけプレッシャーをかけられるか。全部がうまくいくわけではないけど、そういう時もみんなで協力しながら粘り強く守備ができるか」と日本の進むべき方向を力説していた。これが議題の中心だった可能性が高い。

 やりとりを近くで聞いた選手からは「守備のこと。ボールの取りどころ」「攻守について」「最終ラインの上げ下げ」など複数証言が出た。いずれにせよ、コンフェデ杯3戦全敗から来年のブラジルで公言する「W杯優勝」を成し遂げるため今このタイミングで言っておくべきと判断したエースの強い意志と、受け止める戦術家ザック監督の思いがいい意味で交錯したものだった。

 間近で見ていたある選手は「これがトップの姿勢なのかと思った。びっくりした。監督も俺がボスだという姿勢だった」と強い刺激を受けた。原強化担当技術委員長は「いいんじゃないの」と当然のように問題視することはなかった。酷暑の日本列島で多少涼しいはずの仙台だが、ピッチ中央はどこよりも熱かった。【八反誠】