【マスカット(オマーン)10日=木下淳】手倉森ジャパンに武者修行を重ねるサムライが現れた。16年リオデジャネイロ五輪を目指すU-21(21歳以下)日本代表は前日9日にアーミー・クラブ(オマーン1部)と練習試合を実施。後半から出場したFW荒野拓馬(20=札幌)は21分にDF2人の間を右足で射抜くと、44分にもペナルティーエリア外から左足で2点目。「得点力が課題だったので点が取れて良かった」。オマーン代表経験者が5人いる相手を3-0で圧倒した。

 札幌U-18時代に17歳6カ月4日のクラブ最年少Jデビューしたエリートだが、一昨年オフに志願してブラジルへ武者修行に出た。高卒1年目ながら「自分がどれだけぬるいのか。厳しい環境の中で知りたい」と、サンパウロ州1部ペナポレンセの練習に参加。このオフにはメキシコ1部デポルティボ・トルーカへ短期留学した。中東入りの6日前まで中米で技を磨いて「攻撃への積極性、意識が強くなった。海外ならではのずる賢さも学べた」。代表初戦で2得点の結果を残した。

 海外に尻込みしない性格に、手倉森監督も「うれしいね。こういう選手が、海外での短期決戦となる五輪予選に必要」と求めた。心の強さが荒野の武器。頼もしい男が「ROAD

 TO

 RIO」の先頭を走る。

 ◆荒野拓馬(あらの・たくま)1993年(平5)4月20日、札幌市生まれ。札幌東川下小2年でサッカーを始め、札幌U-15からU-18。3年時に背番号10の司令塔としてプレミアリーグイーストの初代王者に導く。昨年7月7日の福岡戦でプロ初ゴールをマーク。J1通算3試合無得点。J2通算34試合4得点。尊敬する選手はACミラン本田。家族は母と弟。180センチ、60キロ。利き足は右。血液型A。

 ◆荒野の海外修行

 高卒1年目の12年オフにブラジル留学。12月下旬から約1カ月、サンパウロ州1部ペナポレンセで練習した。その結果、札幌でレギュラー定着。2年目の昨季は30試合4得点と急成長した。2度目の留学は昨年12月7日から30日までメキシコ1部のトルーカで修行。リーグ優勝10度を誇り、MFナエルソンら同国A代表も在籍する強豪の門を単身でたたいた。費用の一部を自己負担して選手寮に住み込み、現地の選手に交じってサッカー漬けの生活を送った。