<アジア杯:日本1(4PK5)1UAE>◇準々決勝◇23日◇シドニー

 日本代表の「両エース」がどん底に突き落とされた。無情のPK戦は、1人目のFW本田圭佑(28=ACミラン)が枠を大きく越えるミスキック。6人目のMF香川真司(25=ドルトムント)のシュートはポストに嫌われた。惨敗した14年W杯ブラジル大会に続く悪夢が、日本攻撃陣を背負ってきた2人を襲った。

 14年W杯で世界の壁にぶつかり、アジアにもまだ壁があった。上半身裸になった本田は立ち尽くしたまま、シドニーの夜空をいつまでも眺めていた。その横で香川が目を赤く腫らして泣いた。現実を受け止めるには時間がかかった。

 格下のはずのUAEとの準々決勝はPK戦までもつれた。1人目の本田のキックはゴール枠のはるか上を越えた。まさか-。場内はどよめいた。5人では決着がつかず、6人目に登場したのが香川だった。緊張からか助走が長い。シュートは左のポストにはじかれた。

 本田

 サッカーの厳しさ、一発勝負の厳しさ、PKの厳しさを教えられた。今まで、ビッグプレーヤーがPKを外す姿をテレビで見てきました。今回自分が(記憶に)残っていくのは悔しいですけど、これが現実。GKが反応したのを見て、強く蹴ろうとして、しっかり当てられなかった。

 目はうつろだった。香川もまた泣きだしそうになりながら言葉を絞り出した。

 香川

 こんなところで終わるつもりはなかった。負けた以上は取り返せない。時間は帰ってこない。自分が外して負けた意味は、何かあるのかなと思います。

 世界一を目標に掲げていた1年前が、うそのようだ。W杯はブラジルの地で1勝もできず1次リーグ敗退。どん底からはい上がるためには、アジア2連覇は何としても成し遂げなければいけなかった。それを最も感じていたのが、本田と香川の両エースだった。本田はここまで2つのPKを含む3戦連発。香川も20日ヨルダン戦で7カ月ぶりに代表戦で得点を挙げた。ここから、一気に頂点までギアを上げるはずだった。

 本田

 現実は厳しい。重圧に打ち勝つことができなかった我々が未熟だということ。W杯後にも言ったけど、(日本は)厳しい勝負に慣れていない。勝たないといけない場面で勝つ精神力を持ち合わせていない。

 本田、香川、長友-。ビッグクラブに在籍する選手をそろえた日本は、史上最強のはずだった。しかし、世界で勝てず、アジアでも勝てない。この先、日本はどこに進んでいくのか。【益子浩一】