手倉森誠監督(48)が手堅く、大事な初戦で貴重な勝ち点3を手にした。DF植田直通のゴールで先制すると攻め急がせることなく、落ち着いた試合運び。後半もバランス重視の戦い方で、終盤のピンチも粘り強くしのぎ、試合を1-0のまま終わらせた。この世代では10年のU-16アジア選手権、14年のU-19アジア選手権でいずれも敗れている難敵を破ったことで、6大会連続の本大会出場へ向けて弾みをつけた。

 後半ロスタイム。北朝鮮の最後の波状攻撃をしのいだ日本は、MF中島が敵陣の右コーナーに向かってドリブル。最後の時間を使い切った。CKを獲得すると、手倉森監督は得心したように小さくうなずく。直後に試合終了の笛が、夜空に響き渡った。「勝てたことが全て。選手たちは硬くなっていたが、その中で勝てたのが大きい」。

 指揮官は事前に「北朝鮮戦の前半20分までで、この大会をどう戦うことになるかが決まる」と語っていた。言葉通り、初戦の入り方に細心の注意を払っていた。インフルエンザで出遅れていた主将のMF遠藤を先発で起用。右サイドバックには、球際に強い北朝鮮の選手に対抗するべく、DF室屋を配した。

 前半5分。CKをDF植田が押し込み先制。A代表の経験もある遠藤がチームを落ち着かせ、リードを守ったまま試合を運んでいった。終盤はセットプレーで危うい場面もあったが、北朝鮮のシュートはゴールマウスをかすめて外れ続けた。1度つかんだ流れは、最後まで変わらなかった。

 過酷な最終予選を通して成長させる。12日の公式会見で真っ先に言った。「日本の未来、この世代を鍛え上げる大会にしたい。集中開催、過密日程。タフだからこそ高めてくれる」。

 その先に、OA枠を使わずに済ませるという私案も持っている。出場権を獲得した場合について「ロシアW杯の強化に必要なら行使する。でも予選を突破する過程で、この世代がすごく成長したら。OA枠は必要なくなるかもしれない」と期待している。

 手倉森監督は「初戦から北朝鮮に鍛えてもらった」と言った。今回のU-23代表チームは、Jリーグなどでのプレー経験の少なさなどを懸念されてきた。それだけに、苦しい戦いは貴重な経験でもある。6大会連続出場を目指しつつ、若い選手たちを鍛え上げる。日本サッカーの未来を占う戦いが、ついに始まった。【木下淳】

 ◆オーバーエージ枠 92年バルセロナ五輪から、男子サッカーは23歳以下の選手のみ出場可能と、年齢制限が設けられた。96年アトランタ五輪からは、登録上限の18人の中で24歳以上の選手が3人まで登録できるようになり、これが一般的にはオーバーエージ枠と言われている。

 ◆リオデジャネイロ五輪への道 今回のU-23アジア選手権が五輪最終予選を兼ねる。43の国と地域が参加した1次予選を突破した15チームと、開催国カタールの計16チームが出場。4組に分かれる1次リーグの各組2位までが決勝トーナメント準々決勝に進み、以降はノックアウト方式で3位までに出場権が与えられる。予選は前回大会までのホームアンドアウェー方式ではなく、中立地でのセントラル方式で行われる。