タイを侮るな。リオデジャネイロ五輪出場を目指すU-23(23歳以下)日本代表は今日16日、同五輪の最終予選を兼ねたU-23アジア選手権で、U-23タイ代表と対戦する。元日本代表DF岩政大樹(33=岡山)は、タイでのプレー経験から、同国のレベルがこの数年で一気にアップしていることを指摘。テロ・サーサナでのチームメートだった“タイのメッシ”ことMFチャナチップ・ソングラシン(22)らに自由を許さないよう「相手の良さを消す戦術」も必要だと説いた。

 岩政は14年に在籍したテロ・サーサナで、タイの英雄チャナチップらとチームメートだった。

 岩政 今回の予想スタメンの半分は同僚だった選手です。おそらくDFラインの全員。あとは中盤右サイドの選手と、主将のチャナチップ。ドリブルなど技術にたけていて、タイで最も人気がある選手。彼がトップ下でどれだけ自由にやれるかが、このチームのポイントだと思います。

 鹿島時代の同僚で、ドルトムントの韓国代表DFパク・チュホが、タイ代表と対戦した後に「チャナチップの技術はすごい」と評したことも、関係者から伝え聞いたという。まさにその通りと、岩政は深くうなずく。

 岩政 彼だけでなく、中盤にはかなりの技術をもっている選手がいる。日本人がイメージしているよりもはるかにレベルが高い。タイサッカーは今、一種のバブル。Jリーグ創設当時と同じような感じ。サッカー熱があって、A代表もW杯2次予選で首位。国全体が盛り上がっている。僕が日本代表のころは、正直ライバルとは思っていなかった。でも今回は、いい試合をすると予想しています。

 手倉森ジャパンは14年にタイと対戦し、2-0で勝った。しかし岩政によると「あれは2軍というか、今回と全く違うメンバー。あのイメージがあると危ない」と警鐘を鳴らす。

 岩政 日本がどこまで相手のレベルを把握し、リスペクトできるかが大事。チャナチップら中盤の選手が技術を発揮できれば、相手は勢いに乗る。そこをしっかりつぶすべき。自分たちのサッカーをしようとすると、できない時に焦りが生まれる。ここ数年、A代表でもそういう図式が多い。格下と侮らず、まずは相手の良さを消すことに集中するというのは、大事な試合にうまく入っていく1つのやり方だと思います。【取材・構成=塩畑大輔】

 ◆チャナチップ・ソングラシン 1993年10月5日、タイ生まれ。12年に下部組織からテロ・サーサナのトップに昇格する形でプロ入り。同年にはタイのA代表にも選出。13年1月にはタイでG大阪移籍の可能性が報じられ、同11月には清水の練習に参加。14年東南アジア選手権スズキ杯でタイを優勝に導き、最優秀選手に。158センチ、56キロ。

 ◆岩政大樹(いわまさ・だいき)1982年(昭57)1月30日、山口県生まれ。岩国高、東京学芸大を経て、04年に鹿島に入団。13年までにリーグ3回、ナビスコ杯2回、天皇杯2回と3大タイトル計7回の優勝に貢献。08年から日本代表。10年にはW杯南アフリカ大会の代表メンバーにも入った。14年にタイ1部テロ・サーサナに移籍。15年からJ2岡山でプレーする。国際Aマッチ通算8試合無得点。J1通算290試合35得点。J2通算42試合4得点。187センチ、85キロ。