「トラ」がほえた。J史上初の3年連続得点王を目指す川崎FのFW大久保嘉人(32)が、アウェー横浜戦で開幕弾を決め、ゴール裏のサポーターの声援にガオ~!と応えた。2-1の後半27分。体勢を崩しながらMF中村のクロスを頭でねじ込んだ。「憲剛さんだったらあそこに蹴るかなと。どこに当たったか分からなかったけど、頭でしたね」。開幕戦限定バージョンの濃い金髪、左サイドを短く刈り込んだド派手なヘアスタイルにした頭で決めた。「(イメージと色は)トラかな。開幕はお祭りだから、お祭り仕様」と笑った。お祭りで役者が仕事をした。

 史上初の3年連続得点王を強く意識している。目安を「30点だね」と設定済み。13年は26点、14年は18点だった。“自分超え”に向け「得点王を取るためには続けないと。今日は今日で終わり」。たった1点で喜んだりしない。

 相手の横浜にとってはイヤ~な1点だ。大久保がそのシーズンのリーグ初得点を決めた相手は昨季まで4年連続で降格している。11年甲府、12年G大阪、13年大分、14年大宮と新たなデスゴール伝説が生まれつつある。J創設の93年から1度も降格のない名門横浜に浴びせた強烈な一撃。ただ、なぜか「マリノスは大丈夫」と残留を保証。根拠は不明だが、この日はトラになりきった野性的なストライカーの動物の勘なのだろう。デスゴールで地獄に突き落としたはずの相手を気遣う優しさもチラリとのぞかせ、J最強の点取り屋が好スタートを切った。【八反誠】