今季限りで現役を退くINAC神戸のMF澤穂希(37)が、有終の美を飾った。新潟との決勝は後半33分に澤が決勝ゴールを奪い、2大会ぶり5度目の優勝を飾った。

 澤の決勝点を演出したINAC神戸FW川澄奈穂美(30)をはじめ、なでしこの後輩たちが澤の背中を継承することを誓った。練習から手を抜かずハードワークする姿を、財産としてしっかり焼きつけた。偉大な先輩から学んだ姿勢をピッチで表現することを使命ととらえ、来季のリーグ、代表へとつなげていく。

 後半33分、川澄はCKを蹴る瞬間、真ん中にいた澤を狙っていた。松田監督からは試合前に「澤はこういう場で自分で決めるから、ボールを集める意識はしなくていい」と言われていたが、前の2本のCKも澤とタイミングが合い「中で競り勝てるはず」と迷わず蹴りこんだ。しっかり頭で決めた澤に「もうすごい、さすが、という言葉しかない」と敬意を表した。

 11年から澤の背中を間近で見てきた。後輩たちが口をそろえるのは「普段の練習から、絶対に気を抜くプレーをしない」。真のプロの姿を後輩に示し、練習でも試合でも、最もスライディングをして最も体を張る。「(ハードワークは)サッカーだけでない。人生の中でも常に全力でやることが大事」と説いた言葉も後輩たちの心に残っている。

 来季からはピッチにもベンチにも澤はいない。だが川澄は「澤さんから学んだ経験は大きな財産。それをピッチの中で表現することが、澤選手がこういう選手だったと、伝えていくためにも大事なこと。その使命感をもってやっていきたい」とキッパリ。DF近賀も「その背中を継承していくことが大事」と話した。澤の残した魂は、後輩のプレーを通して、来季もピッチで花を咲かせる。【岩田千代巳】