鹿島のU-23(23歳以下)日本代表DF植田直通(21)が、涙の完封星を故郷に届けた。熊本・宇土市出身。喪章を巻き、黙とうした湘南戦を制した直後、インタビュアーの質問に対し10秒間、絶句。こみ上げて目頭を押さえたが、涙があふれた。声が出ない。「プレーで勇気づけようと思いましたか」と聞かれ、計30秒後に「はい。僕には…それしかできないので」と絞り出した。「(こらえるのは)無理でした。育った故郷が…信じられない。衝撃を受けたし、亡くなった方もたくさんいる」と神妙に話した。

 前夜の「本震」で、避難先の高台で車中泊を余儀なくされている家族の安否確認に、再び追われた。試合まで「ずっと見ていた」というテレビには、実家に近い宇土市役所が半壊した様子が映っていた。代表入りの報告で「何度も、あいさつに行った所。震源の益城町にも友達はいる。つらいです」と視線を落とした。

 「サッカーどころじゃなくても、僕にはサッカーしかない」と切り替えて試合を迎え、被災地への横断幕に「グッときて」完封の力になった。U-23代表ではリオ五輪が控え「鹿島でも五輪でも結果を出す。それが熊本の皆さん、日本を元気にすることだと信じて、やるしかない」。余震が続く地元のためにプレーする覚悟を決めた。【木下淳】