E組の東京が「夏男」の活躍で、4年ぶりに決勝トーナメント(T)進出を決めた。勝てば突破が決まるアウェーのビンズオン(ベトナム)戦で、FW前田遼一(34)が2得点の活躍を見せ、2-1で勝利。キックオフ時の気温が35度という過酷な条件の中、ホームで負け知らずだった難敵を破って2位で突破した。日本勢は東京とH組2位の浦和が決勝Tに進出。東京は17、24日の1回戦でG組1位の上海上港(中国)と対戦する。

 全身から大粒の汗があふれ出ても、前田の運動量は最後まで落ちなかった。キックオフ時で35度、後半開始でも34度と、日が沈んでも気温が下がらないベトナムの気候。終盤は、ビンズオンの選手たちも足が止まり、球際で手が出るほど疲労困憊(こんぱい)となる中、34歳は最後まで前線からボールを追いかけた。試合のMVPに選ばれ「サンキュー」と言って笑顔。疲れを感じさせなかった。

 ゴールが1番の疲労回復の“特効薬”だった。前半21分。右サイドを駆け上がったMF橋本の右クロスをニアに走り込んでヘディングシュート。後半10分には、相手のバックパスを拾うとゴール正面へ向かった。右足でまたいで、左へコントロール。ペナルティーエリアの外から放った左シュートは、ホップしながらネットに突き刺さった。「結果が出ないと疲れも出るけど、ゴールが入ると自然と元気になる」。スコアと同時に、精神面のエネルギーをチームに補給した。

 「暑いのは嫌いじゃない。試合をやっているとあんまり気にならないんだよね、不思議と」。その言葉が真実だと数字が物語る。J1で決めている通算148得点のうち、夏(7~9月)の試合で67点マーク。半分近いゴールを暑い夏場に決めている。5月のベトナムは日本の夏同様の高温多湿。そんな中で夏男が力を発揮した。

 東京にとって公式戦6試合ぶりの勝利となった。4月6日のACLアウェー江蘇戦から1分け4敗。城福監督は直近の試合から先発6人入れ替えた。前田もその1人だった。同監督は「内容はともかく結果を出せてよかった。次に進めることが光栄」と安堵(あんど)した。J1では苦戦が続く中、自力で4年ぶりにアジアのベスト16へと駒を進めた。