J2昇格1年目の山口が、大金星で今季初の3位に浮上した。C大阪に敵地で打ち合いを演じ4-2の完勝。先発11人のうちJ1リーグ経験者は1人だけ。専門学校やアマチュアからはい上がった無名の雑草軍団が、華麗な攻撃的サッカーを披露した。J1自動昇格圏の2位町田と勝ち点1差。初のJ1も夢ではない。

 雑草軍団の山口が、華麗な花を咲かせた。短いパスをつないで、自陣から攻める。これぞ人もボールも動く魅力的なサッカーだ。守ってカウンター1発だけを狙う弱者の戦法とは違う。FW柿谷らを擁し、J2最強と呼ばれるC大阪に果敢に真っ向勝負を挑み、攻め勝った。前半12分にスルーパスからDF小池が先制弾。1度は逆転されながらも終盤、一気に突き放した。

 2得点のMF鳥養(とりかい)は喜びを抑え切れない。「僕らはJ3から上がってきてプライドも何もない。有名な選手は1人もいない。だから体がもたないくらい練習する。雑草魂です。負けたくない気持ちだけでやっている」。先発11人中、J1に所属した経験があるのはDF北谷(横浜)とMF黒木(鳥栖)平林(名古屋)の3人。うちJ1リーグ戦の出場歴があるのは平林だけ。その平林も所属先がなく、約3年もフットサルに転向した異色の経歴を持つ。

 クラブの総額年俸は推定1億円。C大阪なら柿谷と杉本のFW2人分ほどに相当する給料で、全選手を賄う。生活費が足りず現在もサッカー教室などで、副業をする選手もいる。練習場も転々とし、まれにグラウンドを間違う選手もいるという。先制、ダメ押し弾を決めたDF小池は「僕らは全員で前へ、前へ-。J1に昇格できたらいいな」。エース岸田ら主力を故障で欠きながらの勝利に上野監督は「彼らはよくやっている」と笑顔だ。3年前までは地域リーグにいた。これぞジャパンドリームだ。山口に金はない。だが、夢はある。【益子浩一】

 ◆レノファ山口 1949年(昭24)に発足した山口県教員団が前身で、06年に「レノファ山口FC」を創設。中国リーグだった13年にJリーグ準加盟が承認された。14年にJFL4位でJ3昇格、15年にJ3で優勝して1年でJ2へ。レノファはrenovation(維新)の「レノ」とfight(戦う)、fine(元気)の「ファ」を合わせた造語。来月のJ1ライセンス申請を目指している。本拠地は山口市の維新百年記念公園陸上競技場(収容約2万人)。