1-1の後半28分。浦和FW李忠成(30)は、MF武藤がシュートを打った瞬間、鹿島GK曽ケ端の目の前に詰めていた。「100回行って、1回あるかないかですけど、行っておいてよかった」。相手がファンブルしたボールをさらい、同17分の同点弾に続く2得点目を流し込んだ。

 7試合ぶりに先発を外れ、後半開始から出場。「丁寧にやるべきことをしていこうと思った」。14年の同カードでも途中出場から、曽ケ端がシュートをファンブルしたところを押し込んでいた。いつも続ける「やるべきこと」が宿敵相手の決勝弾につながった。

 この試合から今季リーグ戦10得点のFW興梠が、リオ五輪に出場のため不在。08年に北京五輪に出場した李は「必ずいい経験になる」と出場を喜んでいた。自分はひざの故障で、五輪では本領が発揮できなかった。だから相棒には、100%の力を発揮してもらいたい。クラブを心配せず、気兼ねなくリオで爆発してもらうためにも、不在初戦は負けられなかった。

 昨年の同カードでは、興梠が同じように曽ケ端のファンブルをさらい得点してもいた。その姿とも重なる決勝弾だった。相棒不在の穴は、李がしっかりと埋めてみせる。【塩畑大輔】