「ヤングなでしこ」の一員として12年のU-20女子W杯を戦ったINAC神戸MF仲田歩夢(あゆ、23)が22日、4年前の戦いを振り返った。現在、パプアニューギニアで行われているU-20W杯では、12年以来2大会ぶり出場の日本が決勝トーナメント進出を決定。仲田は史上最高の3位をつかんだ4年前の日本大会を思い返し、24日にブラジルとの準々決勝を戦う後輩たちへエールを送った。

 憧れの東京・国立競技場。12年9月8日、3位決定戦のナイジェリア戦だった。MF田中陽子、FW西川明花のゴールで2-1と競り勝った日本。試合終了をベンチで見つめた仲田は「どういう意味なのか分からなかった」という涙を流していた。「みんなに助けてもらって結果を出せて。でも、自分は思ったようにプレーできなくて…」。1次リーグ初戦のメキシコ戦、第2戦ニュージーランド戦に先発出場。だが、本来の力は発揮できず、追い打ちをかけるように練習で左足付け根を負傷した。出場2試合で大会が終わった。

 大会直前にはなでしこジャパンがロンドン五輪で銀メダルを獲得。女子サッカーに対する注目は「ヤングなでしこ」にも波及していた。「あの時は国立に3万人が集まってくださって。あの雰囲気は忘れられない。応援のおかげであそこまで行けたと思います」。仲田自身、4年前に注目を浴びた経験が、意外な部分で今の自分につながっていると語る。

 「あの大会にかかわってちやほやされたけれど、INACに戻ってきたら、先輩たちがすごすぎて全然試合にかかわれない。『私、大したことないな』『他の選手の方がうまいな』とすぐに思えた。もっとやらなきゃいけないと思えたこと。その経験が今の自分にプラスになっていると思います」

 現在の仲田は日の丸から遠ざかり、チーム内でも激しい先発争いにもまれる日々。それでも現在は副将の肩書がつき「あの頃と、今では気持ちにもだいぶギャップがあります」と23歳の自分を分析する。「悔いが残る大会。もっとできたと終わってから思った大会」。その経験をプラスに捉える瞬間があったからこそ、仲田は今も神戸市内の練習場で声を張り上げる。

 南太平洋に浮かぶ島国で、世代世界一を目指し戦うヤングなでしこたち。INAC神戸からもDF守屋都弥(みやび、20)MF杉田妃和(ひな、19)が「優勝してきます!」と宣言して旅立っている。仲田は「私たちの分も優勝して帰ってきてくれたらうれしいです。リーグでもたくさん試合に出ている選手が多い世代。自分は力を出し切れなかったので、とにかくみんな力を出し切ってほしい。その1つ1つが大きな力になると思います」と願いを込めた。

 なでしこジャパンがリオデジャネイロ五輪出場を逃すなど、暗い話題が続いた16年の女子サッカー界。エールだけでなく仲田も「若い選手が活躍しているのは、本当に刺激になります」と言い聞かせるように発した。フレッシュな世代の躍動を、多くの国民、関係者が日本から見つめている。