突然の移籍決定により、サポーターに別れのあいさつをする場に恵まれなかった。山岸は神妙な面持ちで、言葉を紡ぎ出した。

 山岸 サポーターに直接、顔を向けてあいさつできなかったのが心残り。今、サポーターの前であいさつしたら多分、泣いちゃうと思う…。

 移籍先の北九州は、1年でのJ2復帰を目標に掲げる。今季から使用する「ミクニワールドスタジアム北九州」はJ1規格の約1万5000人の収容人数を誇る。

 山岸 新スタジアムはJ1で戦うためのもの。今季はJ3で戦って、1年でJ2に復帰する。欲張るわけじゃないけど、J2に残留ではなくJ1昇格を目指して戦わないといけない。そういう覚悟があり、決意がある。

 山形同様「昇格請負人」として体を張って、北九州のゴールを守り続ける。

 山岸 アスリートとして、これから自分のキャリアが前に進んでいく上で、大きな決意と希望と覚悟を持って北九州に行きたい。また新たなチャンスを与えてくれたクラブに、どこまで貢献できるか。

 J2復帰を果たせば、山形との対戦が実現する可能性がある。古巣とはいえ、勝利にこだわる闘将山岸がブレることはない。

 山岸 山形との対戦が実現すれば、特別な感情が湧いてくるのは間違いないけど、北九州の勝利に全力を尽くすだけだね。【取材・構成、高橋洋平】

 ◆山岸範宏(やまぎし・のりひろ)1978年(昭53)5月17日、埼玉・大里町(現熊谷市)生まれ。市田小3年からサッカーを始め、大里中、熊谷高を経て、中京大に進学。00年の大学選手権で関東、関西以外の大学で初の日本一。01年に浦和へ入団し、06年のJ1優勝に貢献。14年6月に山形へ期限付き加入し、J1昇格に導き15年に完全移籍。16年にJ3北九州へ期限付き移籍。J1リーグ通算171試合、J2リーグ通算65試合出場。185センチ、88キロ。血液型O。