<J1:札幌2-1柏>◇第3節◇30日◇日立柏サッカー場

 20歳の成長株が値千金の1発を決めた。コンサドーレ札幌のMF西大伍(20)がアウェー柏戦で決勝点を奪った。1-1の後半21分、MFクライトンの浮き球パスに右足を伸ばし、柏GK南のまたを抜く今季初ゴール。昨季、リーグ戦は5試合出場のみにとどまったが、今季は全3試合に先発。同じサイドハーフのMF藤田、西谷らがけがなどで出遅れる中、レギュラー奪取を確実にした。

 西のエンジンが入った。後半21分。右サイドでMFクライトンがボールを持つ。DFとGKの間にパスが出ると直感した。「チャンスだと思った。必死でボールを目指した」。ゴール前へ20メートル激走。DFに引っ張られながら滑り込んだ。思い切り右足を伸ばした。スパイクの裏にギリギリで当たり、ボールはGK南のまたを抜けた。J1初ゴールの決勝点。ゴール後、クライトンに抱きつかれた。苦しかったが新鮮だった。

 夢が現実になった。試合前夜、夢を見た。自分がまた抜きのゴールを奪っているシーンだった。「まさか、その通りになるとは思いませんでした」と驚いた。日ごろから筋トレに励み、腹は5つ以上に割れている。この日も1対1で倒れない強さを見せ、決勝弾を呼び込んだ。昨季リーグ戦5試合出場の20歳が、プロ3年目でブレークの予感が漂ってきた。

 開き直りの気持ちが体を動かした。今季公式戦全5試合に出場しているが、合格点からはほど遠かった。初のJ1に戸惑い、プレーが消極的になっていた。23日のナビスコ杯川崎F戦前。沖田コーチから呼び出された。「自信を持っていけ」「ミスを怖がるな」など励まされた。「吹っ切れた」と、初の途中出場となった川崎F戦では存在感を見せ、初勝利に貢献した。

 シーズン前の下馬評を覆し、レギュラー奪取を確実にした。同じポジションの同期のMF藤田、昨季10得点のMF西谷らがけがで出遅れる中、チャンスをものにした。ボールを保持でき、安定したプレーができることにコーチ陣の評価も高い。「ナビスコでも勝って、ここまでやって、勝てるという自信がついてきた」。チームが上昇気流に乗ってきた陰には西の存在があった。【長島一浩】