<J1:神戸2-0大宮>◇第27節◇27日◇NACK

 神戸MF大久保嘉人(26)が、全2得点を演出し7試合ぶりの勝利に貢献した。前半12分にMFボッティの先制点の起点を作ると、後半2分にはFW吉田のダメ押し弾をアシストした。2-0で大宮を破る原動力となった。1カ月半も白星から見放された神戸は12位に浮上し、J1残留に前進した。29日のW杯アジア最終予選ウズベキスタン戦(10月15日、埼玉)の代表候補発表前に、大久保が勢いをつけた。大分は公式戦18試合ぶりに敗れ、総得点差で名古屋が暫定首位に立った。

 すべては背番号13から始まった。前半12分。大久保が前へ出したボールが、3人を経由してゴール前のボッティへと渡り、待望の先制点が生まれた。後半2分にもFWレアンドロからボールを受けた大久保がシュート。そのこぼれ球を自ら拾い、左足の絶妙クロスで吉田の追加点をアシストした。本来の点取り屋ではなく、ゲームメーカーとして、勝利を呼んだ。

 「1人、2人と(大宮の)選手が(マークに)来るから、オレに2人来たら誰かが空くでしょ。そこからつなげていくように、みんなに伝えた。今まで見たことないような感じでパスがつながったもんね。やればできるんやなあ…って」。

 これまではワガママなまでに得点にこだわったが、13日横浜戦から志願して中盤に下がり、献身的に守備もこなすようになった。「点も取りたいけど、勝てないと意味がない」。前半25分にもらった警告は激しいプレスで相手の足をひっかけたもの。暴言やラフプレーで警告を受けた昔とは違う。前線から最終ラインへと動き回り、終盤には両足がつった。チームのため、倒れるまで走った。

 苦境にあえいだチームを救った。8月9日磐田戦を最後に6試合も白星から見放され、J2降格圏も迫っていた。価値ある1勝をもたらし、J1残留へ前進。残り7試合で安全圏に入ったが、それでも大久保は「まだ1つ勝っただけ。長かったけどね。まだこれから」と慢心はなかった。

 29日にはウズベキスタン戦に向けた日本代表が発表される。神戸のエースは、日本のエースでもある。期待を一身に背負い、大久保は、ただひたむきに走り続ける。【益子浩一】