<J1:鹿島2-1京都>◇第29節◇18日◇カシマ

 鹿島FW興梠慎三(22)は、昨年まで背番号13を背負っていた男の前で、誇らしげに自分の背中を指さした。代表帰りの初戦、そして相手には昨オフ移籍後、初めて鹿島の本拠地に足を踏み入れた元エースの京都FW柳沢敦(31)。「13番継承」の舞台は整っていた。「決めたらアピールしようと思っていた」。ゴール後のパフォーマンスを照れくさそうに振り返った。

 一瞬のスキを突いて、ゴールを狩った。前半19分。MF中後から前線へのロングボールに快足を飛ばす。並走していた京都DF水本のクリアミスをさらい、飛び出したGKの動きを見極めながら左足で沈めた。

 この1得点が決まるまで、公式戦7戦連続無得点。ACL準々決勝第2戦アデレード戦では決定機を外し、チームも敗退した。試合をチェックしたクルブチのジーコ監督はオリベイラ監督に「興梠が決めていたら勝っていた」とメールを送っていた。「チームにもファンにも迷惑をかけた。ヤナさん(柳沢)の前で決めたいのもあったけど、今日の試合は絶対に決めたかった」。興梠は強い決意で臨んでいた。

 今年は勝負の年と位置付けていた。1月、鈴木強化部長に「13番、空いてますよね?」と願い出た。「重みは分かっているし、僕はプレッシャーをかけられて伸びるタイプなので、付けたかった」。当初は同部長は空き番号にする考えだったが、意気込みを感じ取って、エース番号を与えた。

 柳沢の背中から学んで成長した。昨年はともにサブ組でプレーし、ゴール前での動き出しなどを教わった。先輩も、後継者のことを認めている。柳沢は「急激に伸びている。いい経験をしてレベルアップしてほしい」と試合後にエールを送った。

 チームは2連覇へ加速している。「去年は自力優勝できてない。残り5試合全勝して自力で優勝したい」。背番号13を背負う男は堂々と言った。【広重竜太郎】