<J2:仙台2-1湘南>◇第29節◇22日◇ユアスタ

 途中出場の仙台FW中原貴之(24)がベガルタを救った。ホームに首位湘南を迎え2-1で逆転勝ち。前半35分に先制を許したが、後半35分と44分に同点、決勝ヘッドをたたき込んだ。左足付け根痛の離脱から8戦ぶりに先発復帰したDF朴柱成(25)もアシストを記録。湘南との勝ち点差を3に詰め、次節26日は4位甲府と直接対決する。

 結末は劇的だった。後半ロスタイム。DFエリゼウのクロスに反応した人の山で、中原の頭だけが抜きんでた。滞空時間の長い跳躍で相手DFに競り勝ち、決勝弾をゴール右隅に流し込む。「遠かったけど、思い切って首を振った。着地したら入っていてホッとしました」。ガッツポーズ後に両手を広げて歓喜のラン。ユアスタの大歓声を一身に受け止めた。

 相手DFジャーンが後半開始早々に退場し、ベガルタが執拗(しつよう)にサイドを攻めた。1点を追い「勝つしかない。徹底的に頭を使え」との指揮官の指示がはまった。後半35分の中原の同点ゴールも、DF朴のクロスから生まれた。

 苦しい夏場に、チームの役に立ちたかった。中原は今季序盤、10試合連続でベンチを外れ、紅白戦もできない少人数での練習を受け入れるしかなかった。一時は「試合に出たら話を聞いてください…」と明るさを失ったが、腐らずにアピールを続けて復調。前2節は先発フル出場したが「仕事ができず先発を外されて悔しかった。みんなが夏場に疲れているから、序盤は出なかった自分が頑張ってこそ充実する」と意気込んだ。

 首位湘南を直接たたいて1ゲーム差に接近。手倉森監督は、16日に誕生した長女梓紗(あずさ)ちゃんに初勝利を届けた。真澄夫人(29)とともに前日21日に退院。病院では視聴できなかったベガルタの試合を見られた家族に勇姿を見せた。次節26日は4位甲府戦。指揮官は「次も大きなゲーム。4位以下を引き離したい」と誓った。苦手の夏場に、仙台の勢いが増した。【木下淳】