<全国高校サッカー静岡県大会決勝トーナメント:清水商4-2加藤学園暁秀>◇21日◇準々決勝◇静岡・草薙球技場

 風間弟が50メートルの独走だ。静岡県総体覇者の清水商が、元日本代表MF風間八宏氏(48)の次男宏矢(1年)が自陣からカウンターで飛び出し、そのままドリブルして逆転ゴールを決めるなど加藤学園暁秀を破った。新人戦覇者の静岡学園はFW森田隆広主将(3年)の公式戦9カ月ぶりの得点で袋井に完勝した。昨年準優勝の常葉学園橘、藤枝明誠も4強入りし、特別シード校が順当に勝ち上がった。準決勝は28日に行われる。

 ゴールへの道が、はっきりと見えていた。1-1で迎えた前半28分。自陣で味方のクリアボールを拾った宏矢は、迷わずドリブルを仕掛けた。「前を見たら相手が1人だったので」。ぐんぐん加速しながら、敵陣を切り裂くと、最後は相手DFをフェイントでかわして右足を振り抜いた。約50メートルのドリブル突破から、勢いそのまま放った弾道はゴール右隅に突き刺さった。「得意のシュートコースだった。入ってよかったです」と目を輝かせた。

 入学してわずか1カ月後にスタメンで出場。県総体では連続ハットトリックを達成する活躍で7年ぶり優勝に導くスーパールーキーも、自身初の選手権のピッチで硬くなった。前半序盤は精彩を欠き、チームも先制点を許した。それでも同20分にMF前沢甲気(2年)のゴールで追いつくと、伸びやかな動きが戻ってきた。50メートルの独走でエンジンを全開させると、後半だけで5本、前後半で両チーム最多の合計8本のシュートを放ち、相手ゴールを脅かし続けた。「選手権独特の雰囲気にのまれそうになった。3年生の気迫がすごかった。まだチャンスを決めきれないところが課題です」と謙虚に話した。

 後半37分に4点目を挙げた兄宏希(3年)は「負ければ最後。スコアより勝てて良かった」と表情を引き締めた。伝統のトリコロールに兄弟で身を包むのも選手権が最後になる。28日の準決勝は、今季公式戦2勝2敗の静岡学園と対戦する。宏矢は「厳しい戦いになると思う。でも、自分が決めて勝ちたい」と、力強く宣言した。名門の若きエース宏矢が、あこがれの舞台へ走り始めた。【神谷亮磨】