<J1:浦和2-0新潟>◇第6節◇10日◇東北電ス

 浦和のMF阿部勇樹(28)が、サッカー人生をかけるつもりで臨んでいた。後半28分。阿部は味方の右サイド攻撃に呼応して、後方からゴール前へ駆け込む。アイコンタクトをかわしたMFサヌから足元へパスが送られると、ダイレクトで打った。「打つ瞬間にコースが見えた。力を入れずに蹴られた」。前節3日の湘南戦に続く2戦連発の一撃で先制点を奪い、普段はもの静かな男が、右手人さし指を天空へ突き上げて喜んだ。

 W杯メンバーの最終選考の場として臨んだ、7日の親善試合セルビア戦。昨年10月のスコットランド戦以来の先発チャンスで大敗を喫した。J屈指の運動量と守備力で岡田代表監督の信頼は厚く、最終メンバー入りは確実視されているが、スタメン奪取のアピールができなかった。「この間の試合でサッカー人生が終わったわけではないし、続けていかなければ。残念だと思ったことを、リーグやナビスコ杯で生かす。立ち止まるわけにはいかない」と新潟戦で自分自身に奮起を促していた。

 後半36分には、MFポンテの直接FKに左足を投げ出してコースを変え、試合を決定づける2点目を奪った。「ボールに触れたかどうかも分からない」という無我夢中の1試合2得点は、07年4月1日の大分戦(九石ド)以来、3年ぶりだった。守っては厳しいプレスを90分間続けて新潟の反撃の芽を摘み、完封での3連勝をたぐり寄せた。

 海外挑戦の夢がある。W杯で主力として輝きを放ち、日本の勝利に貢献したい。そのためにもやるべきことがある。「僕はレッズの選手。今はレッズの試合で全力を尽くしたい」。人生をかけたシーズンへの意気込みをプレーで表現した。【山下健二郎】