<J1:山形3-1仙台>◇第13節◇17日◇NDスタ

 J1初の「みちのくダービー」は、山形に軍配が上がった。1-1の後半14分、FW田代有三(27)が勝ち越しゴールを奪うと、23分にも勝利を決定づけるこの試合2得点目をゲット。W杯中断期間中に取り組んだ「4-1-4-1」システムの攻撃力が、威力を発揮した形だ。

 エースの2発が、新たなダービーの歴史を築いた。1-1の後半14分、田代が相手GKの動きをきっちり確認し、狭いゴールの左隅へ勝ち越し弾を流し込む。「宮さん(MF宮沢)からいいボールが来た。枠に入れるだけでした」と仲間をたたえる。自らのゴールもうれしいが、新システムの完成度がアップしていることを、喜んだ。

 ホーム最多2万231人の大歓声を、最初に呼び込んだのは、生え抜きMF秋葉だった。開始早々、中央約40メートルのロングシュートをたたき込み、先制する。「雨が降っていたので(何か起きると思い)蹴ってみました」と照れる。だが、この秋葉のゴールこそ「ニュー山形」を印象づけた。以前より2列目の人数を2人増やし4人にしたことで、チーム全体の攻撃意識が上がった。秋葉も試合前日「ゴールを見てプレー出来るんで、チャンスが来る」と、ゴールの予感を口にしていた。

 小林監督が就任した08年、ホーム開幕戦は空席だらけだった。この試合前、ぎっしり埋まったスタンドの背後に、真っすぐに虹(にじ)が立ち上った。「東北に来て、良かった」。サッカーをするには気候的なハンディを負う地で、仙台も含め両サポーターが「J1での対決」を待ち望んでいることに感慨深げだった。初めてダービーで山形が3連勝したが「そんなことより、こういう環境の中で結果を出せたことがうれしい」と、しみじみ語る指揮官。ダービーをJ1で継続するためにも、J1定着、そして上位進出への足がかりに、この1勝を生かす。【山崎安昭】