<高校サッカー岩手大会:盛岡商7-1遠野>◇6日◇決勝◇盛岡南公園球技場

 盛岡商が遠野に大勝し、全国優勝した06年度以来の選手権切符を手にした。来季のJ1仙台入りが内定しているMF藤村慶太(3年)が主将として引っ張り、2年生FW花坂直人がハットトリック。日本一監督の斎藤重信氏(64)が総監督に就任した年に、5年ぶり16度目の出場を決めた。

 来季からJ1の舞台で戦う藤村が、高校最後の大会でまず県大会を突破した。後半19分、味方が得たPKのキッカーを任され、大きく息を吐いた。3点リードしていても緊張した中、ゴール右隅に決めると、笑顔で応援席の元に走った。試合後は、歓喜に沸くイレブンの中で泣いた。「うれし泣きです。今までの思いがこみ上げてきて」。人一倍の重圧を持ち込んでいた。

 盛岡商は過去2年、決勝でPK戦の末に敗退していた。敗因が藤村にあった。昨年も、一昨年も5人のキッカーに指名されたが、2年連続で失敗。「去年はコースを狙いすぎたので、今年は強く蹴った。決められて本当にうれしい」。準々決勝の前にベガルタ入団を発表し、マークもきつくなった。それでも「周りは気にせず、主将として悔しさを晴らすことだけ考えていた」と勝利を追い求めた。

 決勝戦の7得点は、記録が残る71年度以降で最多。得点差も75年(遠野6-1花巻北)を36年ぶりに更新した。立役者は2年生エース花坂だ。2-0の後半7分、クロスバーを直撃した味方のシュートを混戦から押し込むと、23分には藤村のクロスに合わせてシュート。1度GKにはじかれたが、こぼれ球に反応した。

 圧巻は33分。DF小林航也(2年)のアーリークロスに168センチの体を目いっぱい伸ばし、ダイビングヘッドでゴールに突き刺した。今大会3戦7発で得点王に輝き「去年の決勝は(途中出場の)自分が決定機を外し、3年生を引退させてしまった。借りを返せた」。後半だけでハットトリック達成の活躍だった。

 優勝した06年度以来の全国選手権。藤村も花坂も、その影響を受けて盛岡商の門をたたいた。中学1年だった藤村は当時、東京に遠征していた。運良く決勝と重なって国立競技場に足を運び、快挙を見届けた。「あの試合がなかったら盛商に入らなかったかもしれない」と言えば、小学6年でテレビ観戦していた花坂も「入学のきっかけ」と同調。「県大会は通過点。目標は日本一」と口をそろえる2人が、目に焼きついている舞台に盛岡商を返り咲かせた。【木下淳】

 ◆盛岡商の全国制覇

 06年度の第85回大会で達成。2回戦から登場し、大分舞鶴に4-2で初戦突破。続く武南(埼玉)を1-1からPK4-2で下して勢いに乗り、広島皆実を1-0、八千代(千葉)にも1-0と強豪を連破した。決勝は作陽(岡山)に2-1で逆転勝ち。後に浦和入りするFW林が同点、MF千葉が残り5分で決勝弾を決めた。東北勢の優勝は66年度の秋田商以来40年ぶりだった。