<J1:札幌2-1仙台>◇第21節◇11日◇札幌ド

 最下位相手に痛恨の逆転負けだ。仙台がアウェーで札幌に、5月26日の川崎F戦以来となるリーグ戦の黒星を喫した。前半12分にDF渡辺広大(25)が左CKを頭で合わせ、幸先よく先制。しかし、8日のナビスコ杯東京戦から中2日で疲労も見えるチームは後半34分に同点に追いつかれると、後半ロスタイムに渡辺のオウンゴールで勝ち点を逃した。公式戦の連敗は今季初となり、2節ぶりに2位に陥落。悲願のタイトルへ、踏ん張りどころを迎えた。

 自責の念があふれ出ていたのか。試合後、渡辺は何度も目頭をユニホームで拭った。後半49分、巻き込むようなニアサイドへのクロスに、右足を伸ばす。わずかに触れたボールが軌道を変え、ゴールへと転がっていった。「見ての通りです。クリアしようとしたら足に当たって…。自分のせいです」。怒りを押し殺すように無表情。MF梁のCKをたたき込んだ今季リーグ初得点も「それで勝てれば良かったけど、意味のないゴールになってしまった」とバッサリ切り捨てた。

 最後のプレーが勝敗を分ける形となったが、追加点を奪えなかったことが敗因だ。梁は「慌てすぎた。もうちょっとボールを回して、ブロックを作っている相手をおびき出したりすれば良かった」と悔やむ。8日に東京でナビスコ杯を戦い、9日に帰仙して練習。10日に最終調整して札幌入り。先発を入れ替えるなどしてもハードスケジュールに疲れは隠せず、本来の精度やアイデアを欠いた。梁は「疲労どうこうより、自分たちの試合運びが下手くそだった」と言い訳しなかった。ミスでボールを失っては守勢に回り、さらに体力を奪われる悪循環だった。

 我慢の時ではあるものの、悲観する必要はない。今後は過密日程の心配もなく、来週からは離脱していた角田と富田のダブルボランチが全体練習に合流する予定。「ロッカールームから会見場まで、相当遠く感じた。我々にとって、それくらいこたえる敗戦だった」と最初こそ肩を落とした手倉森監督も渡辺に、そして全員に、期待を込めた言葉を送った。「成功の後にはミスがある。ミスで心が折れなければ、成功のチャンスが巡ってくる。彼(渡辺)だけでなく、チームがこれを糧としなければ」。試練を乗り越えてこそ、高みに手が届く。【亀山泰宏】