背番号10が、開幕スタメンへ強烈アピールだ。J2山形は長崎・雲仙キャンプ最終日の15日、FC鹿児島(九州リーグ)と練習試合(45分×4本)を行い、合計9-1で勝利。愛媛への期限付き移籍から復帰したMF伊東俊(25)が3得点1アシストと結果を残し、成長した姿を見せつけた。

 1年前とは別人のような輝きを放った。最初の見せ場は左MFで出場した2本目の20分。DF石川の左クロスのこぼれ球が中央で待つ伊東のもとへ。「負けていたし、ピッチもぬれていたので」と左足で豪快にたたきこみ、ゴールラッシュの口火を切った。

 勢いは止まらない。2分後には右サイドからのパスを再び中央で受け、左足でミドルシュートを決めた。38分には右足の正確な低いクロスでFW万代の得点をアシスト。仕上げは3本目の37分、足が止まった相手をFW中島とのワンツーで翻弄(ほんろう)し、右足でハットトリック達成。背番号と同じ10得点を誓う男は「シュートを多く打てて、入ったのでよかった」と控えめに喜んだ。

 3得点は、いずれもポジションにとらわれない動きから生まれた。伊東は「みんなが動いてできたスペースに入っただけ」と練習の成果を強調する。昨季の移籍前は個人で打開しようとするシーンが目立ち、出場機会も激減。愛媛でバルバリッチ前監督から「周りを見ながら、場面を考えて勝負するか判断しろ」と指導を受けて変わった。「試合にも使えてもらったし、収穫はすごく多かった。プレーは全然違う」と話す。抜群のテクニックに加えて視野が広がったことで、より相手に脅威を与えるのは間違いない。

 奥野僚右監督(44)も「あと2週間で始まるという意欲を見せてくれた」と猛アピールに目を細めた。伊東にとって3月3日の開幕は古巣との対戦。恩返しするためにも、スタメンの座を渡すわけにはいかない。【鹿野雄太】